初めて食べる食べ物を子どもが受け入れるには?

みなさんは「食べたことがないもの」を積極的に食べるタイプですか?私は普段時間のあるときに料理をするのですが、スーパーに行ってあまり見慣れないものを見かけると気にはなります。でも、「おいしくなかったらどうしよう」とか「調理方法分かるかなあ」とか思ってしまうとついつい手に取るのをやめてしまいます。

大人だと味を想像したり、何に使われることが多いかでなんとなく自分の好みかどうかは予想できると思うのですが、これがもし、幼児に置き換えてみると、世の中知らない食べ物だらけですよね。でも成長するにつれて食べられるものも増えてくるし、親としては栄養面を考えてもいろんな食べ物にチャレンジしてほしいところ!

子どもの新しい食べ物に対する恐怖を克服するためには、社会的影響が非常に重要であると言われています。今回ご紹介する論文では、子どもと一緒に定期的に食事をとることで、子どもが受け入れることのできる食べ物の種類が多くなるかもしれないということが示唆されています。

では、ご紹介します!

*専門的な内容になりますので、とりあえず結果が知りたい!という方は「まとめ」から読んでいただいても大丈夫です!!

2-5歳の子どもの新奇食品の受容への特定な社会的影響

はじめに

食品新奇恐怖症は「新しい食品を食べることをためらうこと」と定義されます(Barnett、1963)。人間のような雑食性の動物は、食事のために新しい食べ物を探索し、試食し、最終的にそれを含める必要があるのですが、有毒物質を摂取するリスクを回避するために、それらに対しても非常に慎重でなければなりません(Freeland&Janzen,1974; Glander,1982; Milton,1993も参照)

2〜5歳の幼児は、乳児(4〜7ヶ月)よりも新奇恐怖的です。そして乳幼児期では新奇恐怖の反応は出にくいですが、子どもが自分で食べ物を選択できるようになる幼少期には、新奇恐怖がより重要になると主張されてきました(Birch, Gunder, & Grimm-Thomas,1998; Cashdan,1994; Cooke, Wardle,Gibson,2003も参照)。 さらに幼児のより高いレベルの新奇恐怖が野菜、果物、肉の消費量の減少と関連しています。そして野菜、果物、肉は、植物毒や食中毒菌が存在する可能性があるため、最も危険性を持つ可能性のある食品です(Cooke et al .,2003年,Cashdan,1998年も参照)。

目的

子ども(2.5〜5.2歳)にとって新しい食品を受け入れることと消費することにどの程度まわりの環境が影響するかを調べることです。特に、成人モデルが存在し、別の食べ物を食べる場合、同じ食べ物を食べる場合、成人モデルが存在するが、食べていない場合について研究しました。

方法

参加者

27人の子ども(男7人、女20人)
ペンシルバニア州立大学児童開発研究所に属する3つの教室の子どもで、研究が始まった頃は、子供たちの年齢が2.5歳~5.2歳でした。実験期間は2ヶ月間でした。

実験条件

(a)成人モデルが存在し、別の食べ物を食べる場合(異なる色の条件)
(b)成人モデルが存在し、 同じ食べ物を食べる場合(同じ色の条件)
(c)成人モデルが存在したが、食べていない場合(存在条件)

食品

子どもの食品は、セモリナを水で調理したものに3種類の色と味付け(黄色のクミンセモリナ、緑色のケーパーペーストセモリナ、赤色のアンチョビセモリナ)をしたもので、子どもたちは今までに食べたことがないものでした。
大人モデルの食品は、子どもの食べ物と同じ手順に従って調理し、着色しましたが、味付けは砂糖でした。

手順

<子どもモデル>
子どもたちは、3つの条件にそれぞれ9人ずつ割り当てられました。
3つの条件のそれぞれですべての子どもを1回テストしました。
実験グループは、以下の図のように分けられました。

  実験グループ① 実験グループ② 実験グループ③
(a)異なる色の条件 黄色 緑色 赤色
(b)同じ色の条件 緑色 赤色 黄色
(c)存在条件 赤色 黄色 緑色

<成人モデル>
異なる色の条件では、大人は子どもの前で無色のセモリナを食べました。
同じ色の条件では、大人は子どもの前で同色のセモリナを食べました。
存在条件では、大人はセモリナを食べませんでした。

いずれの場合も大人は、連続的かつ熱心に食べ物を摂取し食べ物に関連する話題以外について子どもと話すように指示されました。

行動の記録

各試行は昼食の直前に行われ、5分間続きました。 5分間(300秒間)の試行を10秒間×30のサンプル間隔に分割し、各サンプルポイントの瞬間(つまり、ストップウォッチの「ビープ音」)に摂食行動が発生しているかどうかを記録しました。
各試行の最後に残りの食べ物の量の重さを測り、食べた量(g)を計算しました。

結果

3つの実験条件の間で、子どもの摂取までの潜伏時間、摂食行動、および摂食量は大きく異なりました。特に、子どもたちは、存在条件や異なる色の条件よりも同じ色の条件で多くの新しい食べ物を受け入れ、食べることが分かりました。

まとめ

子どもにだけ食べさせるグループや大人が食べているものと違うものを食べさせるグループに比べ、全く同じものを大人が食べるグループにおいて一番子どもが受け入れ、食べるという結果が出ていました。

同じものを大人が食べているというようなまわりからの影響と、それによって新しい食べ物を食べることができたという経験の繰り返しによって、新しい食べ物に対する恐怖症が克服できます。(Birch,1980; 1983; 1998; Birch & Marlin, 1982; Harper & Sanders,1975; Sullivan & Birch, 1994)。

幼児は、上記の実験のように、自分の行動を他人と一致させることができます(Tomasello,1999)。これを利用して私たち親は子どもたちに食べて欲しいものを子供たちの目の前で食べること、つまり、子供たちのロールモデルになってあげると良いのではないかと思いました。

 

参考文献
Elsa Addessi, Amy T. Galloway, Elisabetta Visalberghi, Leann L. Birch.(2005). Specific social influences on the acceptance of novel foods in 2–5-year-old children. Appetite, 45(3), 264–271.

引用文献
Barnett, S. A. (2017). The rat: A study in behavior. Routledge.
Birch, L. L. (1980). Effects of peer model’s food choices and eating behaviors on preschooler’s food preferences. Child Development, 51(2), 489–496.
Birch, L. L. (1983). Children’s aversions to new foods. Physician and Patient, 8, 46–47.
Birch, L. L., & Marlin, D. W. (1982). I don’t like it; I never tried it: Effect of exposure on two-year-old children’s food preferences. Appetite, 3, 353–360.
Birch, L. L. (1998). Psychological influences on the childhood diet. Journal of Nutrition, 128, 407S–410S. Publishing Company.
Cashdan, E. (1994). A sensitive period for learning about food. Human Nature, 5, 279–291.
Cooke, L., Wardle, J., & Gibson, E. L. (2003). Relationship between parental report of food neophobia and everyday food consumption in 2–6-year-old children. Appetite, 41, 205–206.
Freeland, W. J., & Janzen, D. H. (1974). Strategies in herbivory by mammals: The role of plant secondary compounds. The American Naturalist, 108, 269–289.
Glander, K. E. (1982). The impact of plant secondary compounds on primate feeding behavior. Yearbook of Physical Anthropology, 25, 1–18.
Harper, L. V., & Sanders, K. M. (1975). The effect of adults’ eating on young children’s acceptance of unfamiliar foods. Journal of Experimental Child Psychology, 20, 206–214.
Milton, K. (1993). Diet and primate evolution. Scientific American, 269, 70–77.S. A., & Birch, L. L. (1994). Infant dietary experience and acceptance of solid foods. Pediatrics, 93, 271–277.
Tomasello, M. (1999). The cultural origin of human cognition. Cambridge,
MA: Harvard University Press.

ABOUTこの記事をかいた人

Cheah

母国はマレーシアで、日本に留学し薬学部を卒業した後、薬剤師として15年働いていました。アメリカに12年間住んだことがあり、日本には13年住んでいます。 子どもが3人と孫が1人います。今までの子育て経験を生かした記事を書きたいです。

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