みなさんは子どもに対して「自分の思い通りになってほしい!」と思うことはありますか?
もっとこうしてほしい、将来はこの職業についてほしいなど、本人に伝えるかは別として思うことがある人は少なくないのではないでしょうか。
実は、これまでの研究では、親が自分の思い通りに子どもをコントロールしようとすることが、子どもに良くない影響を与えることが示されています(Barber&Harmon、2002)。もちろん危険なことや、してはいけないことに対して子どもに注意することは必要ですが、必要以上に子どもを自分の思い通りにしようとして、子どもが健全に育たないことはあまり良くないと思います。
ではなぜ、親の都合によって子どもをコントロールしようとする人が存在しているのか。今回はそんな疑問に関する論文をご紹介します。
*専門的な内容になりますので、とりあえず結果が知りたい!という方は「まとめ」まで読み飛ばしてくださっても大丈夫です。
親の完璧主義の世代間における伝播:媒介変数としての両親の心理的コントロール
目的
親が完璧主義であることが、心理的コントロールの使用につながると予測し、調査。
親が*心理的コントロールを使用することで、子どもに完璧主義が伝達するのかどうかを検討。
*心理的コントロール:主に自分の心理的なニーズと感情的な問題に注目し、親として権威のある立場であろうと意識する親が使用する育児手段 (Barber, 1996)。
方法
参加者
155人の女子学生(18〜24歳)とその両親(41〜62歳)
手順
娘の参加者は質問票を自分で記入し、各親に質問票を配布するように求められました。
すべての項目は、1(強く同意しない)から5(強く同意する)までの5段階で採点されました。
指標
①完璧主義
・適応的な完璧主義:5つの完全性次元を測定するFrost Multidimensional Perfectionism Scale(Frost et al., 1990)を使用。(「私はほとんどの人よりも自分に高い目標を設定します。」など。)
・不適応的な完璧主義:Soenens et al(2005)の指標を使用。(「間違いをすれば人々はおそらく自分に良い評価を与えません。」など。)
②親の心理的コントロール
・娘:両親の行動目録(Schaefer, 1965)の尺度を使用して、親の心理的コントロールを評価。(「私の母/父は、私が母/父のような視点を持っていない場合、私にはあまり親しみを示しません。」など。)
・親:娘に対する自分の子育て行動に関して項目を評価。(「娘が私のような視点を持っていない場合、娘にはあまり親しみを示しません。」など。)
結果
まず、親の適応的な完全主義ではなく、親の不適応的な完全主義が、親の心理的コントロールを有意に予測しました。 この関係は、母親よりも父親のほうが強いことがわかりました。
次に、母親と娘の不適応的な完全主義の間には有意な直接的な関係が見られましたが、父親と娘の不適応完全主義の間には見られませんでした。
最後に、プロセス分析は母親と父親の両方にとって、心理的コントロールが両親と娘の不適応な完全主義の関係における介在変数であることを示しました。
図1. 親の完璧主義、心理的コントロール、娘の完璧主義の間の関係の構造モデル。 * p .05。 *** p .001。(Bart Soenens et al (2005) Figure 2 に基づいて独自で作成)
まとめ
完璧主義の中でも、「〜しないといけない」とか「〜でなければいけない」という考えにとらわれていると、子どもをコントロールしようとしてしまうことにつながり、そしてこの関係は父親の方が母親よりも高かったようです。
また、親のコントロールは、娘の完璧主義につながり、この関係は母親の方が父親よりも高いということもわかりました。親のコントロールが娘の完璧主義につながるということは、娘も自分の子どもをコントロールする可能性があるということですよね。高い数値の結果が出ていたわけではありませんが、可能性があるということはわかりました。
「〜しないといけない」と考えてしまうような完璧主義は、高すぎる目標を設定し、失敗を過度に恐れてしまう上に、自己評価がとても低くなるようです(Frost et al., 1990)。「〜しないといけない」と思いすぎたり、思い詰めると良くないですね。対照的に、Hamachek (1978)は、前向きな完壁主義は高い目標を設定して、それを達成するための努力や積極的な行動につながる可能性があると主張しました。
実際最近の研究では、うつ病、自尊心低下、不適応な罪悪感、不安、引きこもり、問題行動などは、思春期後期における親のコントロールが関連していることが実証されています(Barber&Harmon, 2002)。これは、失敗を過度に心配する親が、子どもに対し条件付きの承認を与えたり、罪悪感を誘発させたり、必要以上に干渉したりする可能性が高いことを示しています。そして、このような場合に考えられるのは、親が自分の「〜しないといけない」とか「〜でなければならない」という考えにとらわれ、子どもの思いや願いが見えなくなってしまっているということです。
一方で、以前ご紹介した論文のように西洋文化とアジア文化では親のコントロールの仕方が異なるため、アジア文化のような、親の温かさや、子どもとの繋がりを含むようなコントロールの仕方をすることができれば、子どもの問題行動につながらない可能性もあります。
私も親として、子どもたちが私の望むように振る舞うことを期待する気持ちは自然と出てきます。そして、私自身の子育てのスタイルが、自分の親によってどう育てられたかに関係していることも否定できません。子育てに悩んだり迷ったりしたときは、やはり自分自身がどう育てられたかを考えることもあるからです。しかし、私にとっても子どもたちにとっても最終的に良い結果をもたらすには、子どもたち自身を信じて委ねることが重要です。自分の思い通りに子どもがならずに、つい口を出してしまいたくなるかもしれませんが、時には耐えて見守ることも大切ですね♪
参考文献、
Soenens, B., Elliot, A. J., Goossens, L., Vansteenkiste, M., Luyten, P., & Duriez, B. (2005). The intergenerational transmission of perfectionism: parents’ psychological control as an intervening variable. Journal of family psychology, 19(3), 358.
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