前回はストレス耐性についての論文をご紹介しました。
今回は、
児童期に母親からかけられた言葉が、大学生になってどのように影響しているか
について研究した論文をご紹介します。
皆さんは普段、お子さんにどのような言葉をかけていますか?
例えばお子さんがお皿を割ってしまったとき。
「大丈夫?けがしなかった?」「何をしているの!」
また、何かお手伝いをしてくれたとき。
「手伝ってくれて助かるわ」「返って邪魔になるわ」
その都度出てくる言葉は変わると思いますが
皆さんが普段かけている言葉が、
将来のお子さんの「自尊感情」や「他者信頼」に影響するかもしれません。
自尊感情は、
自分は色々な良い素質をもっている、だいたいにおいて自分に満足している
と思う気持ち。(前回出てきた「自己価値感」によく似た言葉です)
他者信頼は、
自分には現実に信頼できる人がいる、多少のことがあっても周りの人と信頼関係を保っていける
と思う気持ち。
一方、母親からのかける言葉は大きく二つに分かれます。
①具体的な場面における言葉かけ。(子どもが何かをした時にかける言葉)
具体的な場面 | 受容的な言葉 | 否定的な言葉 | 感謝の言葉 |
お手伝いをした | 「返って邪魔になるわ。」 | 「助かるわ。」 「ありがとう。」 |
|
テストで良い点をとった | 「頑張ったね。」 「すごいね。」 |
「これくらいは当たり前よ。」 | |
テストで悪い点をとった | 「次は頑張ろうね。」 | 「 遊んでばかりいるからよ。」 |
どうでしょうか?「言ったことあるやつあるな」と思った方もいらっしゃるのではないでしょうか。
②特性に関する言葉かけ。(子どもの一般的な特徴・特性に対してかける言葉)
ポジティブな言葉 | ネガティブな言葉 |
「信頼しているよ。」 「思いやりがある。優しい。」 「いい子。」 「個性があっていいね。」 「大好き。」 |
「信じられないわ。」 「うそつき。」 「わがままだ。」 「いじわる。」 「つまらない子。」 「ばかだ。」 |
こちらもいくつか身に覚えがある方がいらっしゃるかもしれません。
では、自尊感情や他者信頼が高かったり、低かったりした大学生は
幼児期にどのような言葉をかけられていたのでしょうか。
自尊感情について
受容的な言葉の多い・少ないが自尊感情にあまり影響していないのが意外でした 😯
自尊感情を高めるという点では、受容的な言葉をかけるより、
普段からその子の特性に対してポジティブな言葉をかけてあげる方が有効なのですね。
他者信頼について
こちらも意外な結果だと感じました。
感謝の言葉が多く、否定的な言葉やネガティブな言葉が多いグループが他者信頼が一番高いとは 😯
個人的には自尊感情も他者信頼も、
高すぎても低すぎても物事を的確に認識するのが難しくなると思っています。
たとえば、自尊感情が高すぎると傲慢・楽観的すぎるなどという印象を与える可能性があります。
また、低すぎると自分に自信が持てず、消極的になってしまいます。
さらに他者信頼も、もちろん今回の定義にあるように
「信頼できる人がいる・信頼関係を保っていける」と思うことは
人間関係をよりよくするために大切だと思いますが
それと同時に「信頼できる人かどうかを見極める」ことも大事になってくるのではないかと思います。
したがって、高すぎず・低すぎず、ある程度高い状態に保つのがいいのではないでしょうか。
今回の論文でわかったことは、
・自尊感情を高めるには、普段から子どもの性格や個性をしっかりと見てあげて、
「信頼しているよ」「優しいね」などポジティブな言葉をたくさんかけてあげるといい!
・他者信頼を高めるには、「ありがとう」や「助かるわ」としっかりお礼をいうことを意識しつつ
よくないことをしたときにはしっかり注意してあげることも必要!
ということでした。
将来の成長したお子さんの姿を楽しみにしながら、
いろんな声をかけてあげることで
お子さんとのコミュニケーションをたくさんとってみてはいかがでしょうか。
(参考文献:「児童期の母親の言葉かけと女子大学生の自尊感情や他者信頼」)