みなさんのお子さんは保育園や幼稚園でお友達はいっぱいいますか?どんなお友達とどんな遊びをすることが多いですか?
今回のテーマは、同性どうしで遊ぶことと異性と遊ぶことで能力に違いが出るのかということについて調査した論文をご紹介したいと思います。
幼児期に同性のお友達と遊ぶことは、子どもの発達に広く影響する可能性があるのだそうです。例えば、男の子のグループと比べて女の子のグループは、おままごとなどのしっかりとしたルールや役割のある活動を選ぶ可能性が高いようです(Leaper、1994; Smith&Inder、1993)。さらに女の子グループは、協力を重視し、グループ内の関係を良くするようなコミュニケーションを行います(Maccoby、1988)。
一方で男の子は、勝負性のあるものなど、順番が決まるような活動を選ぶ傾向があるという研究結果が報告されています(Maccoby&Jacklin、1987)。
また、幼児期の初めの学校の能力の個人差は、自分を制御することと同性どうしで遊んだ経験との違いによって部分的に影響されることが予想されます。「自分を制御すること」とは、今回の論文では「今の自分の気持ちや欲求をいったん抑え、その場にふさわしい対応をするような能力」を指します。
今回ご紹介する論文では、自分を制御することや同性どうしとの遊びが学校関連の能力の発達に影響するのではないか、さらにこの影響は男女間で異なるのではないか、ということを検討しています。実際はどうだったのでしょうか!?
*専門的な内容になりますので、とりあえず結果が知りたい!という方は「まとめ」から読んでいただいても大丈夫です!!
幼児期の能力:性別による遊びと努力的制御の役割
目的
幼児の同性仲間とのふれあい遊びが、学校での能力にどう影響を与えるか、また、同性どうしの遊びと学校での能力との関係に*努力的制御がどれほど左右されるかを調べること。
*努力的制御(EC)とは執行的注意の効率性として定義されており、支配的な反応を抑制したり、あるいは、一部支配的な反応を引き起こしたり、計画したり、エラーを検出したりする能力を含みます(Rothbart&Bates, 1998)。
方法
秋学期に98人の幼児(男児50人、女児48人、平均年齢54.77ヶ月)の同性遊びを観察。
(屋内外の自由遊びの時間中に観察)
秋学期の終わりに教師たちが子どもの努力的制御について報告し、次の春学期の終わりに別の教師たちが子どもの学校での能力について報告。
対策とコーディング
努力的制御EC
Children’s Behavior Questionnaire(Goldsmith&Rothbart、1991)の注意力転移、注意力集中、抑制控制サブスケールの適応を完了し、その項目が子どもにとってどれだけ真実であるかを評価しました(1.非常に間違っている〜7.非常に真実)。
学校での能力:社会的
学校での社会的に適切な行動の子どものレベルを測定する6項目の尺度で評価されました。
(「この子は他人が表現した感情や意図に適切に応答します。」「この子は適切な戦略を使用して仲間との対話を開始し、初期試行が失敗した場合に代替戦略を使用します。」など)
学校での能力:学力
子どもの論理的思考と数学的能力を測定する9項目の尺度で評価されました。
(「この子は、変化の性質に関心と理解を示します。」「この子は言語を使用して情報を収集し、問題を解決します。」など)
学校での能力:知覚運動
子どもの運動能力、知覚能力、および身体能力を測定する5項目の尺度で評価されました。
(「この子は年齢に適した目と手の筋肉運動の整合を示しています」「この子供は年齢に適した静的および動的バランスを示しています。」など)
結果
努力的制御(EC)
学校での能力の測定値との間に相関関係が示されました。
学校での能力:社会的
ECの高い男児において、同性と遊ぶ度合いと正の相関がありました。(図1.参照)
対照的に、ECが低い男児において、同性と遊ぶ度合いと負の相関がありました。(図1.参照)
また、女児については、ECのレベルが高いほど、学校関連の社会的能力に対する教師の評価のレベルが高くなっていました。

図1.男児と女児の同性遊びと社会的の能力との関係を調整する努力的制御 EC(Richard A. Fabesら, 2003 の図形2に基づいて作成)
学校での能力:学力
ECの高い男児とECの低い女児において、同性と遊ぶ度合いと正の相関がありました。一方で、ECの高い女児においては、同性と遊ぶ度合いと負の相関がありました。(図2.参照)


図2. 男児と女児の同性遊びと学力との関係を調整する努力的制御 EC(Richard A. Fabesら, 2003 の図形2に基づいて作成)
学校での能力:知覚運動
ECの高い男児とECの低い女児において、同性と遊ぶ度合いと正の相関が強く出ていました。一方で、ECの低い女児においては、同性と遊ぶ度合いと負の相関が出ていました。(図3.参照)


図3. 男児と女児の同性遊びと知覚運動の能力との関係を調整する努力的制御 EC(Richard A. Fabesら, 2003 の図形3に基づいて作成)
まとめ
自分を制御することは、子どもの同性の仲間遊びと学校の能力を左右することがわかりました。さらにこの関係は、男の子と女の子ではパターンが異なっていました。
まず、自分を制御する力が高い男の子と低い女の子は、同性との遊びと学校の能力で正の相関がありました。しかし、自分を制御する力が低い男の子と高い女の子には有意な結果は出ていませんでした。
みなさんのお子さんはいかがでしょうか?どのタイプに似ていますか?今回は、この論文の結果が出たから「同性どうしで遊ばせてください」とか「異性と遊ばせてください」ということを言いたいのではありません。そうではなくて、まずはお子さんのタイプや好みをしっかりと把握できているかどうかを、みなさんにも考えてみてほしいと思います。
子ども一人ひとりの特性は生まれつきのものであったり環境によるものであったりしますが、まわりがしっかりとその子の特性を認識してあげる必要があると思います。そして、その子どもに応じてふさわしい環境を作ってあげることが、子どもの成長にもっとつながるのではないでしょうか。
今回の論文では、それぞれの子どもの特性に応じたふさわしい環境の調査はありませんでしたが、またそういった論文を見つけたらご紹介させていただきたいと思います(^^)まずはお子さんがどんなタイプで、どんなお友達と遊ぶことを好むのかなどをしっかりと観察しながら、お子さんを見守ってあげてくださいね♪
NOCCでは、今後も子育てに役立つような論文をご紹介していきますので、ぜひ時間があったらホームページを覗きに来てください♪
Fabes, R. A., Martin, C. L., Hanish, L. D., Anders, M. C., & Madden-Derdich, D. A. (2003). Early school competence: the roles of sex-segregated play and effortful control. Developmental psychology, 39(5), 848.
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