子どもに自分自身で解決してもらう力を付けるには?①

みなさんは学生時代、家で課題をしていてつまずいたときにどのように対処していましたか?また、お子さんはどのようにしていますか?

今回は、数学の科目における家庭学習でつまずいたときに、教科書や参考書を自発的に利用するかどうかについて調査した論文をご紹介します。この論文の魅力は、ただ自発的な使用というだけでなく、「答えだけを見るため」や「考え方も学ぶため」という教科書の使用動機についても調査しています。

まずは勉強中つまずいたなら、諦めずに教科書やノートを見返してほしい!そしてせっかく教科書を使うなら答えを写すだけでなく、ほかの問題にも対処できるように考え方や意味も学んでほしい!と思いませんか?

今回はそうなるために何が必要なのかについて調べているので、ぜひ見てみてください♪

ではご紹介します。

家で数学の勉強していて分からない問題があった時に、教科書や参考書を効果的に利用するには?

目的

授業中の教師による教科書の使用量が、学習者の教科書に対する考え方に影響を及ぼすかどうか、さらに教科書に対する考え方が、教科書を使用することに対する考え方、教科書等の利用量・使い方の質に影響を及ぼすかどうかを明らかにする。

結果概要

家庭学習のつまずき場面において、答えを導くためだけではなく考え方も理解するというような教科書の使い方をするには、まずは授業で先生が教科書を使って授業すること、そして子ども自身が教科書を家庭学習で使うものだと認識し、かつ教科書を見返すことが役に立つと感じていることが必要だという結果が出ていました。

しかし一方で、教科書を見返すことが役に立つと感じていても、考える前に見返すといった望ましくない使用につながる可能性もあるという結果も出ていました。

また、学習に対する考え方において、答えだけでなく解き方を知ることも大切だと感じていることが必要であるということもわかりました!

方法

調査協力者

2つの中学校の1〜3年生510名(男子202名、女子308名)
2つの高校の1〜3年生1340名(男子432名、女子908名)の計1850名

質問紙内容

①数学の問題の解き方が分からない時にどのくらい教科書を利用するか
②教科書を使う時に解き方だけを見返すのか解説も見返すのか。
③教科書を見返すことが役に立つと思うか、見返すことで周りから頭が悪いと思われると感じるか。
④教科書が学校のためのものと思うか、家庭学習のためのものと思うか。
⑤学校の先生が授業で教科書を使っていると感じるか
⑥自分の解いた問題は答えが合っていれば良いと思うか、過程も大事だと思うか

具体的な内容は以下になります。

家庭学習のつまずき場面における数学の教科書・参考書の自発的利用

質問紙の内容

①つまずき場面での教科書等の利用量
援助要請行動尺度(Newman,1990、瀬尾,2005)を参考に数学の家庭学習において「問題の解き方が分からない」といった場面でどの程度教科書等を利用するかを回答。5項目。

②つまずき場面での教科書等の利用の質
野崎(2003)、瀬尾(2007)、予備調査Ⅰ(高校生に対して「家庭学習において一人で考えても分からない問題に出会ったとき、教科書などを見返すかどうか」を調査したもの)の結果を参考に作成。
自律的利用:基本的な定義や性質、解き方の解説を見返すこと。(「解く手順だけでなく、なぜそのような式になるのかについての解説も読む」など10項目。)
依存的利用:類題を探して、解説ではなく解き方だけを見返すこと。自助努力を行なわず、教科書への過度な依存を表す。(「自分で考えずに教科書や参考書を見返す」など9項目)

*結果では、依存的利用が、依存的利用(5項目)と表面的利用(4項目)に分かれた。
表面的利用:依存的利用だけでなく、自律的利用とも中程度の相関。理解を伴わない可能性もある。(「解く手順」に当てはめながら解く」など)

③有効性の認知・コスト感
Newman(1990)、瀬尾(2005)を参考に、数学学習のつまずき場面において、教科書等を見返すことに対する有効性の認知(5項目)、コスト感を作成。
有効性の認知:「わからない問題があったときに教科書や参考書を見返すことは、学習に役立つと思う」など5項目。
コスト感:「わからない問題があったときに教科書や参考書を見返すと、先生(や友達)に頭が悪いと思われるのではないかと思う」など5項目。

④教科書観
「あなたは、数学の教科書や参考書について、どのようなイメージを持っていますか。」と教示。
授業の道具:「教科書や参考書は、授業中、先生が学習内容を説明するときに使うための道具だと思う」など2項目。
家庭学習の道具:「教科書や参考書は、家庭学習中、学習内容を復習するときに使うための道具だと思う」など3項目。

⑤教師による教科書等の使用
予備調査Ⅱ(数学の教師に「授業でどのように教科書を使用するか」を調査したもの)で得られた記述を参考に作成。
「普段、あなたが学校で学校で受けている数学の授業を思い浮かべてください。授業中に、先生はどれくらい教科書や参考書を使用されていますか。」と教示。
教師による参考書の使用:「参考書の『例題』を使いながら、問題を解く手順を教えている」など8項目。
教師による教科書の使用:「教科書の『例題』を使いながら、問題を解く手順を教えている」など7項目。

⑥学習観
学習観尺度(植阪,瀬尾,市川,2006)の一部を使用。
思考過程重視志向:「テストでできなかった問題は、答えだけでなく解き方も知りたい」など3項目。
結果重視志向:「なぜそうなるのかわからなくても、答えが合っていれば良い」など3項目。

結果と考察

中学生集団における推定結果をもとに、独自に作成。 *p<.01 **p<.001

高校生集団における推定結果をもとに、独自に作成。*p<.01 *p<.001

中高生集団ともに、「教師の教科書の使用」から「家庭学習の道具」と「授業の道具」への正のパスが認められた。そして「家庭学習の道具」から「有効性の認知」に正のパス、「有効性の認知から「利用量」への正のパスが認められた。この結果から、「教科書は家庭学習においても利用できる道具である」と生徒に認識させるには、教師が授業の中で積極的に教科書を使用することが重要であることが示唆された。

中高生集団ともに、「家庭学習の道具」から「有効性の認知」に正のパス、「有効性の認知」から「利用量」に正のパスが認められた。このことから、「教科書等は家庭学習で用いる道具である」という教科書観を抱いているほど、「つまずき場面で教科書等を見返すことは有効である」と認知し、自発的に教科書等を利用する傾向があることが示された。
一方、コスト感から利用量への影響は認められなかった。

中高生集団ともに、「家庭学習の道具」から「有効性の認知」を介して、「自律的利用」に正のパスが認められた。しかし、「有効性の認知」から「表面的利用」「依存的利用」にも正のパスが認められたので、「家庭学習の道具」という教科書観を持ち、有効性を認知するだけでは表面的な解法をなぞったり、自分で考える前に見返すといった望ましくない利用につながる可能性も示唆された。

中高生集団ともに、「家庭学習の道具」から「コスト感」への負のパスが有意だった。また、高校生のみ「授業の道具」から「コスト感」への正のパスが有意だった。「コスト感」からは「依存的利用」だけでなく、「自律的利用」への正のパスも認められた。

以上の結果から、教師が授業中に教科書を積極的に使用していると生徒が認識しているほど、「教科書等は家庭学習の道具である」という教科書観をいだき、それによって有効性が高まり、自律的な方法で教科書等を利用することが明らかになった。しかし、有効性を高く認知するだけでは、表面的・依存的な利用にも繋がりかねないことが示唆された。

中高生集団のいずれにおいても、「思考過程重視」から「利用量」「自律的利用」「表面的利用」に対する正のパスが有意となった。「結果重視」から「表面的利用」「依存的利用」への正のパスも見られた。このことから、「解き方も重要である」という学習観を抱いているほど自発的に教科書等を利用し、自律的な利用方法を取っていることが明らかになった。ただし、表面的な利用にも正のパスがみられたことから、そうした利用方法も場合によっては適応的である可能性があることも示唆された。

まとめ

学校の先生たちにはしっかりと教科書を使って授業をしていただきたいですね!学習に対する考え方においても、答えさえ合っていれば良いと思うのではなく「なぜ間違えたのか」「どう間違えたのか」などもきちんと意識することができると効果的に教科書を使用することができるというのも納得でした♪

教科書について適切な認識ができることで、家庭学習もスムーズに進みそうですね♪
個人的に考えたことや詳しい感想はまた次回♪

(引用文献)
福田麻莉(2017).家庭学習のつまずき場面における数学の教科書・参考書の自発的利用 教育心理学研究,65,346-360.)

その他の引用文献
Newman,R.S.,(1990). Children’s help-seeking in the classroom:  The role of motivational factors and attitudes.  Journal of Educational Psychology, 82, 71-80. doi:10.1037/0022-0553.82.1.92
野崎秀正(2003). 生徒の達成目標志向性とコンピテンスの認知が学業的援助要請に及ぼす影響 教育心理学研究, 51, 141-153. doi:10.5926/jjep1953.51. 2_141
瀬尾美紀子 (2005). 数学の問題解決における質問生成と援助要請の促進 教育心理学研究, 53, 441-455. doi:10.5926/jjep1953.53.4_441
瀬尾美紀子 (2007). 自律的・依存的援助要請における学習観とつまずき明確化方略の役割ー多母集団同時分析による中学・高校生の発達差の検討 教育心理学研究, 55, 170-183. doi:10.5926/jjep1953.55.2_170

ABOUTこの記事をかいた人

Yoshino

個別指導塾と集団指導塾で、主に中学受験・高校受験の英語と国語を担当してきました。 世の中の子育てに励む全ての親御さんたちが笑顔になるような記事を書いていきたいです!!

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