子どもは自分の運動能力を正しく理解できるか!?

幼児と子どもは、環境によりよく適合するための行動をする際に、顕著なスキル(有能さ)を示すという事実がありますが、研究によっては彼らは自分の行動で達成することに対して過大評価していることも示されています(Adolph, 1995; Adolph et al., 1993; McKenzie & Forbes,1992)。

また自分自身の行動が、自分の能力の範囲内であるかどうかの判断が曖昧になる可能性もあります。そしてその曖昧さに直面すると、大人も子どもも能力を過大評価してしまう可能性が高いようです。

今回ご紹介する論文は、子どもが自分の身体能力を過大評価してしまうことと、その時に事故が起こる傾向との関係に焦点を当てています。

*専門的な内容になりますので、とりあえず結果が知りたい!という方は「まとめ」から読んでいただいても大丈夫です!!

子どもの身体能力の過大評価と事故傾向の関係

目的

実験1:6歳と8歳の子どもと成人の知覚判断の正確性を調べ、活動を行う能力について検討すること。
実験2:6歳と8歳の子どもの能力に関する知覚判断が、活動を繰り返した経験によって促進される程度を調べること。

方法

実験1

参加者

6歳児(20人)、8歳児(20人)、成人(20人)

設計と手順

4つのタスク(作業)を使用して、特定の身体活動を行う能力に関する子どもと成人の認識と、実際にそれらの活動を実行する能力を比較しました。 各タスクに使用される装置は図1を参照してください。

①垂直リーチタスク
つま先で立って、棚からおもちゃを取り除く。
②水平リーチタスク
木製ブロックのおもちゃのアヒルを取るために、床に手や膝を触れずにしゃがんだ位置から手を伸ばす。
③足踏みタスク
互いに並行に配置された2本の棒をまたぐ。
④クリアランスタスク
2本の支柱に取り付けられた木製のバーの下で、バーを倒したり、床に手や膝を触れずにくぐったりする。

 

図 I. 実験 1 および 2 で使用される垂直リーチ、水平リーチ、ステッピング、およびクリアランス タスクの概略図(Jodie M. Plumert 1995)

尺度

テスト試験の前に、試験以外の場所でリーチ、しゃがみ、ステップ動作を行うことで、参加者の最大レベルの能力に対するベースライン測定値が得られました。例えば、垂直リーチタスクのベースラインは、子どもが壁に向かって立ち、つま先でできる限り高くリーチ(とどく)することによって得られました。リーチの高さは、人差し指の2番目の関節でマークされました。

テスト試行に使用された各タスクには各参加者の身体能力に関する4つのバージョンがありました。
(a)かなり範囲内バージョン
(b)ちょうど範囲内バージョン
(c)ちょうど範囲外バージョン
(d)かなり範囲外バージョン

(a)と(b)における正しい回答は、実験者の質問に対して「はい」と答えることであり、さらにタスクを実行できた場合に正しく測定されたとみなされました。
また、(c)と(d)における正しい回答は、質問に対して「いいえ」と答えることであり、さらにタスクを実行できなかった場合に正しく測定されたとみなされました。

実験2

参加者

6歳児(24人)、8歳児(24人)

設計と手順

実験1と同じ手順が用いられたが、子どもたちはタスクの前に4回の練習を受けました。

結果

実験1では、6歳と8歳の子どもは、かなり範囲外バージョンちょうど範囲外バージョンのタスクに対して実行する能力を過大評価していることが分かりました。大人はちょうど範囲外バージョンのタスクに対する能力の判断をするのが困難でした。

実験2では、6歳児は活動経験があっても、かなり範囲外バージョンちょうど範囲外バージョンのタスクに対して実行する能力を過大評価していました。しかし、8歳児は活動経験をすることで、ちょうど範囲外バージョンのタスクに対する能力の判断には正確でした。

どちらの実験でも、能力の過大評価は6歳児の事故と関連していましたが、8歳児の事故とは関連しませんでした。

まとめ

6歳の段階では自分の運動能力を知覚するのが難しく、実際の運動能力を過大評価してしまうが、8歳くらいになると自分の運動能力を把握する力がついてくるということですね。また、小児期中期では怪我にはつながりませんでしたが、小児期初期では過大評価することが怪我につながることもわかりました。

人間が成長するためには、現在の能力レベルを超えたことを目指すことも必要になります。そしてそうしようとする気持ちがなければ成長する可能性は低いと思います。しかし今回の結果のように、自分の能力を過大評価してしまう上に、それが怪我につながる可能性があるのであれば、見守る側は注意しなくてはいけません。

8歳くらいまでのお子さんに関しては特に、安全であることを目指して注意や指導をしてあげながら、一歩一歩少しずつ経験を重ねて成長していくのを見守ってあげてくださいね

(参考文献)

Jodie M. Plumert (1995). Relations Between Children’s Overestimation of Their Physical Abilities and Accident Proneness. Developmental Psychology , 31(5),866-876 

その他の参考文献
Adolph, K. E. (1995). Psychophysical assessment of toddlers’ ability to cope with slopes. Journal of Experimental Psychology: Human Perception and Performance, 21(4), 734-750.
McKenzie, B. E., & Forbes, C. (1992). Does vision guide stair climbing? A developmental study. Australian Journal of Psychology, 44(3), 177-183.

ABOUTこの記事をかいた人

Cheah

母国はマレーシアで、日本に留学し薬学部を卒業した後、薬剤師として15年働いていました。アメリカに12年間住んだことがあり、日本には13年住んでいます。 子どもが3人と孫が1人います。今までの子育て経験を生かした記事を書きたいです。

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