親と子の信頼を紡ぐ「読み聞かせ」の参考書

こんにちは!

突然ですが「読み聞かせ」と聞いて、みなさんは一体どんなシーンを思い浮かべますか?

子どもが眠りにつく前にベッドで絵本を読み聞かせるところ
ボランティアの方がたくさんの子どもたちの前で読み聞かせるところ
はたまた、自分が幼い頃、穏やかな口調で読んでもらった過去を思い出す方もいることでしょう。

皆さんがそれぞれの中で抱く「読み聞かせ」ですが、恐らく共通しているのは「子どもにとって良いことなのだろう」ということではないでしょうか。

今や知育界隈では3歳までに絵本を1万冊読むといい」なんて言葉も耳にします。

「でも絵本ってたくさんあって選べない」
「そもそもうちの子、あまり絵本に集中してないみたい」

そんな悩みを抱える親御さんにとってたくさんのヒントが掲載されているのが「子どもが夢中になる 絵本の読み聞かせ方」という本です。

以下は、この本を読んで個人的に要約したものです。

「子どもが夢中になる 絵本の読み聞かせ方」

まずは著者がどんな方なのか、少しだけお話させてください。

著者である景山聖子さんは19歳でNHKのパーソナリティとして放送界に入り、地方局アナウンサー・番組ナレーター、舞台朗読・語りという経歴を歩いてきました。

その経験の中から得たスキルをノートに残してきたそうです。

そして、そのノートをもとに公園で見知らぬ子どもたちに向かって絵本の読み聞かせを続け、移り気な子どもたちを絵本に引きつけ、最後まで楽しんでもらうにはどうしたらいいか長い間試みて得たというまさに著者の多くの実体験から生まれたスキルが今回紹介する本に詰まっているのです。

だからこそ、この本からはたくさんの学びがあり、たくさんの納得、共感があるのかもしれません

第一章では「知っているだけで日々の子育てが楽になる読み聞かせの方法」、第二章と第三章では「読み聞かせボランティアをする時の方法」と大きく分けられています。

また、巻末にはおすすめ絵本リストもついており、「教育のための良書」という観点ではなく、「実際読み聞かせたときに、子どもの反応が良かったもの」という観点で著者が厳選して紹介しています。

「親子で楽しめる絵本がほしい」
「子どもの成長に役立つ絵本はどれ? 
「ボランティアで紹介する本を見つけたい」
そんな時にも役に立つまさに「ブックガイド」となっている一冊です。

絵本の魅力

絵本を認識できるようになるのはだいたい生後7ヶ月頃からと言われています。
とは言え、言葉や絵の意味が分かっているというわけではありません。

ただ、お腹の中でずっと聞いていた母親の声、話しかけてくれた父親や周囲の大人たちの声は、赤ちゃんにとってなじみ深いもの
絵本を見ながら、ゆったり語りかけてくれるその声は、赤ちゃんにとってはとても心地の良いものだと感じられるでしょう。

また、読み聞かせをするとき、自然と見つめ合ったり、体を寄せ合ったりします。絵本を見ている子どもの愛らしい表情、面白い反応を見て、親は我が子が愛おしい気持ちでいっぱいになります。

そうして互いに幸せな気持ちを味わいながら触れあうことによって、親と子ども双方の脳内で神経伝達物質のひとつ、「オキシトシン」が分泌されます。オキシトシンは、脳や心の疲れを癒し、人間に対する信頼感や幸福感をもたらす物質とされています。

つまり、読み聞かせをすればするほど、親と子どもの両方に「幸福感」が生まれるのです。さらに、その積み重ねが生涯に渡る親子の強い絆や、信頼感、親密さにつながっていくと言われています。

こうした信頼関係が結ばれていると、子どもにとって親は「安全地帯」のような存在になります。また、その幸福感から生まれた絆によって「人は信じられるものだ」という考えを身につけることができるのです。

その結果、子どもは、他の人々とも親密な人間関係を自然と作れるようになり、新しい集団の中に入るときも、臆することなく溶け込めるといった効果が生まれるとされています。
学校で、社会で、今まさに求められるコミュニケーション能力。それを育むきっかけとして「絵本」が存在しているといってもいいのではないでしょうか。

ここでポイントなのが「教育のために絵本を読み聞かせる」というより、我が子が「ただ愛おしい」という親の想いがとても重要なこと。

読み聞かせは、子どもの記憶に、人のぬくもりや優しさ、笑顔という宝物を残します。そしていつまでも、幸せな記憶となって、その子の人生に力を与え続けることができるそう考えると絵本の読み聞かせパワーは非常に大きいですよね。

絵本による効果

絵本の読み聞かせによって、子どもは豊かな想像力、共感力、感受性、コミュニケーション能力を身につけることができると言われています。

やはり子どもにとって読み聞かせは「良いこと」がたくさんありますね。
でも実は、それだけではないんです。

絵本を読む、読み手側にも実は良い効果があると考えたことはありますか?読み手である「大人」も絵本の世界を通して、考え方に変化が起こるのです。

 心のやわらかい子どもは、絵本の伝えるメッセージを潜在意識に素直に吸収し、行動の糧にしていきますが、大人になるにつれ、この潜在意識は、蓋が閉じてなかなか触れられなくなります。しかし、読み聞かせによって絵本の内容がメタファ(人の心の奥底に抵抗なく入るたとえ話)として潜在意識に届くと、感情や行動に自然と変化が起きるのです。(p118)


子どもと大人の心はもはや違います。

なんでも素直に全てをどんどん吸収していく子どもに対して、さまざまな経験を経て今がある私たち大人

そんな大人たちは、なかなか自分の考えを変えることが容易ではなくなっています。しかし、絵本を読むことによって、知らず知らずのうちに絵本のメッセージが大人の心にも届いている、と著者は言います。

 絵本の選び方

この世には日本を始め、世界中にたくさんの絵本が溢れています。

本屋さんで絵本を買うにしても
図書館で絵本を選ぶにしても
「絵本がありすぎてどれを選べばいいのか分からない!」という悩みに直面した方もいるのではないでしょうか?

「我が子の対象年齢に合ってるからこれにしてみよう」という理由だけで、ついつい教育的に良さそうという観点からそれを手に取ってしまう方もいるかと思いますが、著者はそれよりも大事なことがあると述べています。

それは、読み聞かせで大切なのは、まずお母さんが幸せであること

お母さんが自分を幸せで満たして、そこからあふれ出る幸せで、子どもを満たしてあげてほしいと著者は訴えます。

「教育のため」に読み聞かせていると「〇〇しなくては」という親の義務感が子どもに伝わり、読み聞かせを嫌いにさせてしまうこともあると言います。

また「本当は今のこの時間、洗濯物やごはんの支度など、自分のことがしたいけれど、子どもと一緒にいなくてはいけないから」と読み聞かせをしていると、その気持ちも子どもに伝わってしまい、心に寂しさを感じさせてしまうこともあると著書は警告しています。

読み聞かせのコツ

さて、絵本を選べるようになったら次は「どう読むか」に焦点を当ててみましょう。

保育について学んだことのない方や
本が苦手、読み聞かせが苦手
どうすればいいか分からない
なんて方もいるのではないでしょうか。

著書はこの本の中でいくつかのコツを教えてくれています。
大丈夫、案外簡単ですから気を張らずに!笑

①感想を聞かない

子どもは絵本の読み聞かせをしてもらっている間、いろいろなことを感じています。

「おしまい」と絵本が閉じられた後も、絵本への想いをずっと膨らませ、自分なりに味わい、余韻に浸っているのです。

ところが読み終わったあとに「どうだった?」と感想を聞かれた途端、その質問に答えなければと考えてしまい、心でどんどん想いを膨らませて感受性を育てていた状態から、頭で言語能力を発揮していく「作業」に切り替わってしまう

読み終わったあとは何も聞かずに、そっと絵本を閉じてあげるだけで良い。

「そうすれば子どもは、読み聞かせが終わったあとも、空想の世界で遊び続けることができます」と著書は語っています。

②読み聞かせタイムは褒める時間に

読み聞かせをしている間に、子どもをできるだけたくさん褒めること。

それも「頭がいいね」といった褒め言葉ではなく、「一生懸命考えたんだね」「どうしてわかったの?」と、子どもが努力した部分を具体的に褒めてあげることが大切。

言葉を理解できないであろう月齢の時も「親の雰囲気」で褒められたことをしっかりと感じ取っているといいます。
褒める雰囲気だけで、
 0歳から今注目されている「自己肯定感」を貯めてあげることができるのですね。

③同じ本を何度も要求する子には?

「読み聞かせている途中なのに、どんどん自分でページをめくっていってしまって困っています」

「本を乱暴にめくろうとするので、手の届かない位置で読んでみるも、泣いて嫌がります」

「何度も同じ絵本ばかりを『読んで』と言ってきます。読み終えた瞬間に、最初からまた

こうした読み聞かせに関する悩みが著書のもとに多く届くそう。
そしてそれに対し、著書はこう言っています。

「それは、あなたの『読み聞かせ』が上手だから。お子さんが楽しんでいるからなんです」

読んでいる途中に子どもがどんどんページをめくってしまうのは、それは絵本に集中している証拠。上手に読み聞かせをしてもらうと、子どもは絵本の世界を心から楽しんで、「早く続きが知りたい!」とワクワクしているのです。

だからこそこういうシチュエーションの時は、気の済むように、最後までめくらせてあげて、子どもに委ねてみるのが最善の策。

絵本を乱暴に扱ってしまう、ということに対しては特に開くと飛び出してくる立体絵本、仕掛け絵本に関してが多いようです。
仕掛け絵本は「破くもの」と前提し、借りるのではなく購入し、破いてしまったらテープで補修しながら与え続け、そのテープの補修のあとも、かけがえのない思い出にしてほしいと著書は言います。

④こどものペースにあわせる

コツ③でも触れましたが、自分でどんどんページをめくってしまうことが許されると、子どもは絵本の世界で主導権を握ることになります。

大人は後からついていくような雰囲気に。
これにより、子どもの心の中には、親に見守られている安心のなかで、「自分は見知らぬ世界(絵本の世界)に一人で冒険に行った!」という喜びと、達成感が芽生えます。

その感情は絵本の読み聞かせでとても大切なもの。
今後の想像力を豊かにさせるためにも、感受性を豊かにさせるためにも、この時の瞬間を存分に味わってもらいましょう。

⑤いい子になる魔法の言葉

「ピグマリオン効果」という言葉をご存知ですか?
これは教育心理学で使われる言葉です。

ピグマリオンが自分で彫った女性像に恋い焦がれ、神の力で本物の人間に変えてもらったというギリシャ神話にちなむものなのですが、これは相手に期待をすることで、相手もその期待に応えようとした結果、「期待通りの結果になる」という現象のことをいいます。

例えば、普段あまり笑わないような子どもが一瞬見せてくれた笑顔がとても素敵だったとします。
その時に「笑顔がとても素敵ね」と伝えると、「自分は笑顔が素敵なんだ」と意識するようになり、結果としてよく笑う子になっていくこれがピグマリオン効果です。

親としてできることは、子どもが幼いときから安心を与えて見守り、子どもの良いところも悪いところも含めた全人格を常に受け止めてあげて、「あなたはとても良い子よ、素敵な子よ」というメッセージを与え続けてあげることなのかもしれません。

これを、絵本を読みながらそのメッセージに乗せて子どもたちに伝えていくのです。

また、善悪についても学ぶことができます。

たとえば悪い子が出てくる絵本を読み聞かせながら、お母さんが「こんなことして、悪い子だなあ」とつぶやく。この時、子どもに話しかけるというよりも、あくまでも、お母さんのひとりごととして言うのがポイントなんだとか。
すると子どもは、「こういうことをしたら悪いんだ」と思い、その後、自分の行いも改めることがあるそうです。

このように、ひとりごとの形をとると、直接「こういうことしたら、悪い子だよ」と言われるよりも、ずっと効果があるといわれています。

⑥ウトウト時間にメッセージを

絵本を通して素敵なメッセージを子どもの心に届けることができるということは分かりましたが、それがもっとも届けやすいのは寝かしつけの時間がふさわしいとされています。

θ波という脳波があり、この時にいろいろな考えを人の心の潜在意識まで届けることができると言われていますが、まさに人がウトウトしているとき、まどろんでいるときなのです。

寝る前に一冊本を読んでいるご家庭もあるかと思います。恐らくその時、子どもたちにメッセージが届いていることでしょう。

⑦「読む」よりも「話しかける」

読み聞かせ、というのだから、ただ絵本を読めばいいというわけではなく、お子さんの目を見ながら話しかけるようにして読むことが大事と著者は言っています。

なぜなら絵本の読み聞かせは、朗読ではなく、お子さんとの対話・コミュニケーションだから。

決して、上手く読む必要はないのです。

ただ内容を伝えてみよう、そう思うだけでいい。そう思ったら「どう読み聞かせてあげたらいいんだろう?」なんて深く考えなくてもいいんだという気持ちになりませんか?

寝かしつけにピッタリな絵本

世の中にたくさん溢れている絵本には、それぞれにたくさんのメッセージが込められています。
例えば、歯磨きの仕方や楽しさ、大切さを伝えてくれる絵本や、トイレトレーニングを促すような絵本など、そのメッセージ性はさまざまです。

その中でも「寝かしつけ用の一冊」決めておくと、子どもはその表紙を見たとたん、条件反射で心身がリラックスして、眠りに入りやすい状態になっていくと著者は言います。


特に、『かいじゅうたちのいるところ』『おやすみなさいおつきさま』『よるくま』などは、寝かしつけにおすすめできる一冊なんだとか。

また、逆に寝かしつけに向かない絵本もあるので要注意。

それは、展開のスピーディなものや、先が読めないもの、おいしそうな食べ物や楽しいおもちゃがリアルに描いてある絵などの絵本です。

なぜなら、子どもは絵本を「体験」しているから。わくわくどきどきの冒険や、お楽しみの途中で、気持ちもどんどん昂り、眠気はどこかへ飛んでいってしまうようです

絵本ではなく、テレビやアニメに夢中で困る

タイトルの通り、テレビやアニメに夢中で、どうしたら絵本に興味を持ってくれるのか、というお悩みは著者のもとに何件もくるのだとか。

それに対し著者は「アニメも素晴らしい世界」と伝えています。

アニメの世界はコンマ1秒にこだわって作られ、ノンストップで動き続ける映像はもちろん、音楽や音の入るタイミングも計算しつくされた職人技で作り込んでいく世界だからこそ、子どもにとっては刺激的で、展開があり、わくわくするもの。

子どもがアニメに夢中になるのも、当然なのです。

しかし、それだけ感情に強く訴えるということは、受け取る側はつねに「受け身」になると著者はその危険性を訴えます。
特に、0歳の赤ちゃんは脳の発達の関係で、1ページに何コマもあるマンガのような絵本を見せると混乱してしまうそう。

1ページに一つの絵、それも線や色の単純ではっきりとした「うさこちゃん」が世界中の幼児に愛され、ロングセラーになっているのはこうした理由からかもしれません。

初めて出会う絵本として、長く愛される『ちいさなうさこちゃん』は大人から見ると単純な世界に見えますが、作者のディック・ブルーナーさんは、自分が納得のいく一本の線が描けるまで、何度も絵筆を走らせるそう。納得がいくとは、「絵が、読み人に暖かく語りかける瞬間まで」という意味なのだとか。

まとめ

以上が、『子どもが夢中になる 絵本の読み聞かせ方』をまとめてみたものです。

読み聞かせによる効果や、絵本の選び方などを紹介してきましたがいかがでしたでしょうか。※今回ご紹介した読み聞かせの効果や絵本の選び方に科学的根拠はありませんが、考え方のひとつとして子育ての参考になればと思います。

絵本にはそれぞれ作者が思いを込めた世界観があり、子どもたちはその絵本を通じてさまざまな冒険に出ることができます。
でもやっぱり、何度も言いますが読み聞かせで大切なのは「まずお母さんが幸せであること」
お母さんが自分を幸せで満たして、そこからあふれ出る幸せで、子どもを満たしてあげてほしいのです。

そんな、自分が読んでいて幸せになる絵本探しも著書の巻末にて「年齢別おすすめ絵本リスト85」というページがあり、さまざまな種類の絵本を紹介していますので、そちらもぜひ参考にしてみてくださいね。絵本の表紙、おすすめ年齢、なぜおすすめなのかが掲載されており、とても参考になります。

今後、NOCCではほかの書籍などもご紹介してくので、いろんな角度からご参考いただければと思います。

※当サイトには他にも読み聞かせの効果などについて書かれている本を紹介した記事がありますので、こちらの記事もぜひご覧ください。
子どもの読解力をつけるなら、読み聞かせ?

書籍紹介

書籍名 子どもが夢中になる 絵本の読み聞かせ方
著者 景山聖子
群馬県出身。(社) JAPAN絵本よみきかせ協会代表理事。 TBSなどの情報・報道番組リポーターを経て、(株)シグマ・セブン所属。スーパー Jチャンネル(テレビ朝日)ナレーション、私の本棚( NHKラジオ第一)朗読などの番組担当後、 2011・ 5月独立。現在、 NHK文化センター、三越日本橋本店カルチャーサロン他、全国で「絵本のよみきかせのコツ」講座を開講。絵本講座講師の育成に力を注いでいる。一児の母。(社)全国心理技能振興会認定心理カウンセラー、米国 NLP協会認定 N LPマスタープラクティショナー。
発行日 2013年3月23日
発行所 株式会社廣済堂出版

 

ABOUTこの記事をかいた人

Yanagibashi

2019年に娘が誕生!新米ママとして日々奮闘中です。知育やモンテッソーリ教育などに興味があり、我が子が将来色んな選択ができるような子育てをしたいという目線で様々な育児書を参考に記事を書いていきます!

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