新型コロナウイルスを心配している子どもに親ができること②

今回は、前回に引き続き新型コロナウイルスを心配している子どもに親ができることの第2弾をご紹介します!

新型コロナウイルスが流行している今の状況の中で、お子さんにどのように声をかけてあげたらいいのか、悩んでいる親御さんも多いと思います。そこで、英国のオックスフォード大学とレイディング大学の研究者によって書かれた『新型コロナウイルスを心配している子どもや若者の支援ガイド』から、お子さんへの関わり方についてご紹介します。

まずは新型コロナウイルスを心配している子どもに親ができること①に紹介したことを実践してみてください。それでも子どもが心配や不安を感じている場合には、今回ご紹介する子どもが感じている心配や不安について話してみましょう。

話し方にもコツがあります。ガイドラインから、子どもの不安や心配についての話し方のコツをご紹介します。

『新型コロナウイルスを心配している子どもや若者の支援ガイド』(後半)

7.どうやって話をするか?

不安や心配を引き起こすポイントとして、不確実性の感覚の高まり潜在的な脅威責任感、そしてコントロール感の低減が挙げられます。どれも高まってしまう現在の状況は、不安や心配をあおりやすい状況でもあります。

ですので子どもに話すときには、以下の事柄を意識してあげてください。

  • 心配したり不安になったりすることは当たり前なことだと認めてあげる
  • 現状について正確で現実的な理解を育む
  • 子どもができるシンプルで実用的なことを教えるのと同時に、子どもの責任の限界をはっきり示す

…とは言っても具体的にどうすればよいのかイメージがつかみにくいですよね。以下に話すときの8つの具体的なポイントを紹介します。

ポイント①子どもの恐怖や心配に興味を持ち、認めてあげる

まず子どもの不安や心配に興味を持ち、理解するようにしましょう。具体的には、

  • 子どもの話を聞くときは、「はい、いいえで答えられない質問」から始めてみましょう。
  • 友達やインターネットを通してどんなことを見聞きしているのか聞いてみましょう。

次に子どもたちが不安や心配になっていることを認めてあげましょう。具体的には、

  • 子どもの心配や不安を低く見積もったり、退けたりしない。
  • 子どもが考えをコントロールできないことを責めない。
  • 子どもが考えにとらわれないように励ましてみる
    (例:「心配になる考えが出てきちゃったね。代わりにどんな事なら考えられるかな?」)

ポイント②理解したと感じられるように、心配が普通のことだと感じられるように手助けする

全ての人が不安になりやすい状況であること、心配になることとは普通であることを認めてあげましょう。
たとえば子どもが祖父母のことを心配していたら、「おじいちゃんやおばあちゃんのことを心配しているのね。私も心配しているわ。」と伝えた後で、後述するポイント③、④、⑤を用いるとよいでしょう。

またいつもと違う状況において子どもたちが楽しみにしていたことや好きなことができなくなってしまい、がっかりしてしまうことも認めてあげましょう。がっかりすることは普通のことであって、問題があることではありません。

ポイント③子どもが持っているかもしれない勘違いは優しく直してあげる

子どもの心配に気が付き、理解していることを示した後で、事実を示すことで勘違いを直してあげましょう親自身が知っている事実に基づいて話すことが重要です。

たとえばウイルスが町に来ているので、みんな死んでしまうかもしれないと考えている子どもには、「道を歩いている人がウイルスを持っているって怖がっているようね。近くに住んでいる人が病気であることを知るのは、あまり嬉しいことではないわ。だけどそのことは私たちみんなが死んでしまうことを意味しているわけではないのよ。事実、ウイルスに感染した人の多くは熱が出て咳が出るだけなの。」

子どもの年齢に合致した適切な信頼できる情報源などがあれば、それらを示してあげることも有効です。もし親自身が知らなかったり、答えを見つけられなければ、その際には知らないと伝えることは問題ありません。大人も分からないことがあること、分からなくてもできることがあるということを説明することが有効です。

ポイント④子どもができることについてはコントロール感(自分でできるという感覚)を感じられるように手助けする
(そしてそれが他人にも有益であることを強調する)

このような状況の中でも子どもにできることを具体的に伝えてあげましょう

たとえば、「自分自身を守る方法や、他人を助けるためにできることはたくさんあるの。たとえば手を洗ったり、誰かのために買い物をしてあげたり。」ということを具体的に伝えられると不安や心配が和らぎます。

ポイント⑤子どもの責任について明確な限界を設定する

自分がコロナウイルスにかかったのではないか、コロナウイルスを他の人にうつしてしまったのではないか、というようにコロナウイルスについて子どもが責任感を感じてしまうことがあります。

ですがポイント④にも書いてある通り、自分たちにできることを果たした後には、人々を守るために働いている政府や病院、科学者といった人たちの働きに委ねる必要があります。

全ての責任が子どもにあるのではないこと、一生懸命働いてくれている人たちがいるのだということを子どもに知ってもらうことが重要です。

ポイント⑥良い面を強調する

このような状況ではなかなか難しいことですが、既にあるポジティブな面を見つけられるように声をかけてみましょう

たとえば、「私たちが安全に暮らせるように多くの人が働いてくれているの。お医者さん・看護師さんが病院で、科学者の先生はワクチンを作ろうとしている。私たちも手を洗うことで安全な暮らしに繋がるわ。」など、このような状況の中でも頑張ってくれている人たちの存在に目を向けられるとよいですね。

ポイント⑦心配に対処する方法を見つけ出す

まず心配を感じやすくなるニュースやSNSを大人がいないところで見聞きする時間を制限しましょう
一人で、もしくは子どもたち同士でこのようなニュースを制限なく見ると、心配や不安に支配される時間が延びる一方です。(年長者の子どもにはどのくらい時間を割いたか、どれくらい影響を受けたか認識してもらうよう話したり実験したりするのも有効です。)
ですので、事実を知っている大人と一緒に見たり話したりする時間を取る方が心配や不安に支配される時間は減ります。

そして子どもの持つ心配は子どもに何かできるようなものなのかどうかを考えるよう手助けしてみましょう。子どもにコントロールできないものであれば、徐々に心配に耐えられるようになることや他のことに目を向けられるようになることが重要になります。

具体的な方法として、「心配の時間」を導入することが挙げられます。

  1. 「心配の時間」では毎日一定の時間(最大30分)、親は子どもの心配なことについて聞き、共感します。
  2. もし子どもが「心配の時間」以外に心配し始めたら、子どもには話すのではなく記録を取るよう伝えます。
  3. 次の日の「心配の時間」に記録したことについて話します。
    (記録を振り返ってみると、その時は大きな心配であるように思えても、時間がたつとそうでもないことに気づくのに役立ちます。)

ポイント⑧心配を減らすためにステップを実施する

前回も記載したとおり、一見良さそうな行動でも長期的にみると心配や不安を悪化させる行動があります。

注意すべき子どもの行動

  • 物事を回避する(それまで一人でできていたのに親と一緒でないとできない)
  • 引っ込み思案になる
  • ネットを使って検索ばかりする
  • 長い時間心配や不安なことについて話すのに費やす
  • 危険性についての警戒を解かない
  • 頻繁に確認する(最新のニュースを頻繁にチェックするなど)
  • 何かの行動をするよりも頭の中で多くのことを考える
  • 必要以上に頻繁もしくは念入りに手を洗う

これらの行動が子どもに出てきたら、これらの行動を減らしてみる実験をするように子どもに促してみましょう

たとえば「仲のいい友達ならどうすると思う?」と尋ね、仲のいい友達になりきってもらうのも有効です。また他人に対する心配事(祖父母や友人の健康の心配など)であれば、直接会わなくても繋がれる方法(電話やLINE、手紙やスカイプなど)を使ってみるよう励ますことも有効です。

もし子どもの不安や心配が慢性的で生活に支障をきたしているのなら(たとえば睡眠、学校での課題、友人関係、家族での生活における困難など)、専門家による支援が必要になることがあります。家族だけで抱え込まずに専門家の力を借りることも有効です。

まとめ

コロナウイルスを心配している子どもたちに関わるときには、まず親自身の心を整えることがとても重要になってきます。親の気持ちが少し落ち着いたら、子どもたちの日常的な習慣(睡眠、食事、遊び、休憩)をできる範囲で守ってあげてください。そして子どもが不安や心配になることを認めてあげてください。子どもが過剰な不安や心配を示すときには、正確な理解を促しつつできることと、子どもの責任の限界を示してあげてください。

このガイドラインに書かれていることは、子どもだけでなく親自身も使える内容になっていると思います。私自身もこのガイドラインに書かれていることをやってみてだいぶ楽になりました。(私がしたのは、ニュースやSNSを見る時間を決めること、気分転換を図ること、自分にできることとできないことを分けてできることを頑張る、です。)

なかなか落ち着かない時期が続きますが、このガイドラインがお子さんと親御さんのお役に立てるよう祈っています。

NOCCでは、今後も子育てに役立つような論文をご紹介していきますので、ぜひ時間があったらホームページを覗きに来てください♪

(参考文献:Waite, P., Button, R., Dodd, H., & Creswell, C. (2020). Supporting children and youngpeople with worries about COVID-19. Universities of Oxford and Reading.)

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