アクティブラーニング、効果はあるの?

みなさんは、学習指導要領というものをご存知ですか?

文部科学省HPでは
全国のどの地域で教育を受けても

一定の水準の教育を受けられるようにするために、
学校教育法等に基づき、
各学校でカリキュラムを編成する際の基準
と明記されています。

そして学習指導要領は
昭和33年から、ほぼ10年毎に更新されています。

みなさんが幼児期から大学まで
公立・国立の学校に通われたことがある方は、
この学習指導要領に基づいた教育を受けているということになります。

そして近年話題なのが、

最新の学習指導要領では
主体的・対話的で深い学び
という言葉で謳われています。

今回ご紹介する書籍では、
アクティブラーニングまたは主体的・対話的で深い学びのあり方やそれを支える前提を
幻想ではないかといったん疑い考えるということが目的とされています。

アクティブラーニングにおける幻想と
それに対する疑問点とはどのようなものなのでしょうか?

以下は、この本を読んで個人的に要約したものです。

 

書籍名:アクティブラーニング―学校教育の理想と現実―
著者:小針誠

 

<アクティブラーニング(主体的・対話的で深い学び)とは?>

[定義]
さまざまな活動や体験を採り入れることも含めて、
アクティブな視点で学習者の主体的で能動的な学びを促進し、
深めていくこと。

[具体的な内容]
授業中に児童・生徒が情報通信機器などを使って調べる、
主体的に考える、
グループで話し合って意見を交換する、

先生やクラスの仲間に意見を発表する、
各自が学びをすすめていく、など。

学習指導要領では2020年度より小学校、
2021年度より中学校で全面実施
高校は2017年中に改訂・告示され、
2022年度から学年の進行にあわせて順次実施

2015年当時、全国の公立小学校の48.9%
公立中学校の45.7%
全日制の公立高校では
普通科43.9%、専門学科31.5%、総合学科40.2%が
研究や校内研修などに取り組んでいた。

 

<アクティブラーニングの歴史>

文部科学省関連の委員会や公開文書の中で
初めて「アクティブラーニング」という言葉が現れたのは2008年。

[2008年~]
大学の授業改革が目的だった。
アクティブラーニングを通じて、学生の動機付けを図り
教師・学生双方向型の学習を展開しようとする目的。

しかしあまり取り上げられることはなかった。

[2014年~]
国際化とICT化という新しい社会の変化を前提に
教育方法を中心とした大学の授業のありかたそのものを
根本的に見直す。
生涯にわたって学び続ける力
主体的に考える力をもった人材を育成する目的。

この時期から小中高でも提言されるようになる。

[2017年~]
国際的な水準で見た日本の子どもたちの学力や
学習意欲に対する危機を感じる。
国際順位が低下することの原因を
大幅に授業時間や学習内容を減らした
ゆとり教育に求め、改定へ。

この改訂にあわせて、
2020年度に向けて本格的な大学入試改革が進められている。
詰め込み量だけを問う入試から
思考力・判断力・表現力についても評価する新しい入試へ変革。

大学センター試験を廃止し、
新たに「大学入学共通テスト」と
「高校生のための学びの基礎診断」が導入されることになった。

アクティブラーニングが方法から視点に変わったことで
「アクティブラーニング」という言葉は後退していき
「主体的・対話的で深い学び」という言葉で表現されるようになる。

 

<アクティブラーニングをめぐる5つの幻想と疑問>

[幻想と疑問①] 先行き不透明な未来社会を生きる子どもには
アクティブラーニングが必要で、
これまでの教育では目標を達成できないだろうという前提。

国が主導でおこなうアクティブラーニングの視点で
授業改善が行われれば、

かえって授業のあり方が画一化してしまうのではないか。
授業には教科や教師によって
さまざまな視点や方法があってもよいと考える。

生きる力が身につくか、
誰もそれを正確に証明することはできない

[幻想と疑問②]
アクティブラーニングをおこなえば、
子どもたちは主体的・能動的に
学ぶことができるだろうという前提。

どれだけ内容や方法が活動的であっても
本人自身の動機付けが伴わなければ
他者から強制させられる学びになる
歴史的に見ても主体的・能動的に学ぶ授業や教室の実現は
難しかったようだ。
学習者の学力格差や意欲の問題、
教師の多忙化の問題が指摘されている。

[幻想と疑問③]
学校でアクティブラーニングを経験すれば、
思考力・判断力・表現力、
学ぶ意欲や「生きる力」が高まるだろうという前提。

子どもたちの学ぶ意欲を教師が高めることは
著しく困難なのではないか。
大学1年生を対象とした調査研究では、
アクティブラーニングに主体的、積極的に参加し
その恩恵を受けているのは、
人間関係で積極的で開放的な態度をもつ学生。

思考力・判断力・表現力の評価も
信頼性の高い制度設計が可能かどうかについては
現時点では未知数

[幻想と疑問④]
研修や指導を通じて教師自らが
主体的に学ぶ機会を提供すれば、
どの学校や学級でもアクティブラーニングが
達成可能になるだろうという前提。


そんなに単純な話ではない。

アクティブラーニングは
どれほど教師に能力があっても、

指導者の意図通りの実践になるとは限らない
学習指導要領のカリキュラムマネジメントもそうであるように
学校または教師に対する責任論が過度に強調されすぎている。

[幻想と疑問⑤]
以上の四点より、
アクティブラーニングは好ましく、
国の教育政策として導入されるべきだという前提。

それぞれの教室で教師が自主的に
アクティブラーニングの方法や視点で
授業を展開するのは
否定されるべきではないが、
国のカリキュラム改革として
学習指導要領の視点として導入されるのは
好ましいものではない。
カリキュラムの最低水準を定める最新の学習指導要領は
細部にわたる記述が目立つ。
、教師、子どもの
「自由」「個性」「ゆとり」「自主性」が
じゅうぶんに確保されていないところが

決定的な弱点であり問題点でもある。

 

以上が『アクティブラーニング学校教育の理想と現実』を
まとめてみたものです。

今回のまとめでは、
アクティブラーニングの歴史について

平成以降からをご紹介しましたが、
本書では義務教育制度が発足した
1886年(明治19年)から紹介されています。

実は日本の学校教育の歴史において
アクティブラーニングまたは
主体的・対話的で深い学びのような理念の実現は、
明治時代に学校教育が誕生して以来の課題だったそうです。

そんなにも長い間子どもたちの学力や意欲、
教育方法などについて議論がなされてきたのであれば
簡単に「これが一番だ」と結論づけられる課題ではないように思えるし、
今後も議論は続いていくのではないでしょうか。

また、学習指導要領はカリキュラムを編成する際の基準です。
その基準を100%に近い形でマニュアル化してしまうと

自由や個性、自主性、ゆとりが
確保されないのではないかという筆者の懸念には

私もとても共感しました。

私が塾で担当していた授業の中でも
グループで分かれて話し合いをさせたり
自分で言葉の意味や、文法を調べさせたり
といった主体的・対話的な授業をすることもありました。

ただし、去年の6年生のあるクラスでやったとしても、
翌年の同学年・レベルのクラスではやらないということはありました。
それはそこに通っていた子どもたちの性格や特性、
そのクラスの雰囲気によって効果が変わると思っていて
自分なりにその時に最善であろう方法を考えたからです。

私のとる方法が常に正しいとは限りませんが、
今目の前にいる子どもたちにとって
どのような学習手段をとるかは
その都度現場の先生たちがしっかりと考えるべきだし、
臨機応変に対応できるような
カリキュラムのゆとりは必要だと思います

アクティブラーニングは子どもたちにとって
本当に効果的な学習方法だと個人的には思っています。

ですが、本当に全ての子どもたちにとって効果的なのか
常に子どもたちが主体的・対話的に深く学ぶことができるのか
それを考え続けることが大切なのではないでしょうか。

今回新しく改訂された
アクティブラーニングを含めた学習指導要領の内容が
より効果的に子どもたちに反映され

日本の教育がこれまで以上に
よくなればいいなと思いました

この本には、
他にももっと詳しいアクティブラーニングについての
手法や課題点、
平成以前の教育の歴史などが
載せられています。

本屋さんに行って、
ぜひ一度手にとってみてください。

今回はアクティブラーニングについての
課題点や問題点についてご紹介しましたが、

これは科学的根拠に基づいたものではありません。
ですが、一つの考え方として参考になればと思います。

今後、NOCCではほかの書籍などもご紹介してくので、
いろんな角度からご参考いただければと思います。

↓書籍情報

書籍名 アクティブラーニング
学校教育の理想と現実
著者 小針 誠(こばり まこと)
1973年、福島県生まれ、栃木県育ち。
慶應義塾大学文学部卒業、
東京大学大学院教育研究科博士課程修了。
博士(教育学)。専門は教育社会学・教育社会史。
同志社女子大学現代社会学部准教授などを経て、
現在、青山学院大学教育人間科学部准教授。
著書に、『教育と子どもの社会史』(梓出版社)、
『<お受験>の社会史』(世織書房)、
『<お受験>の歴史学』(講談社選書メチエ)などがある。
発行日 2018年3月20日第一刷発行
発行所 株式会社講談社

ABOUTこの記事をかいた人

Yoshino

個別指導塾と集団指導塾で、主に中学受験・高校受験の英語と国語を担当してきました。 世の中の子育てに励む全ての親御さんたちが笑顔になるような記事を書いていきたいです!!

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