世界7大教育法に学ぶ才能あふれる子の育て方とは?(その2:レッジョ・エミリア教育、ドルトン・プラン教育、サドベリー教育)

みなさんこんにちは。
前回、世界2大教育法と呼ばれるモンテッソーリ教育シュタイナー教育についてご紹介しました。
今回その2ではレッジョ・エミリア教育ドルトンプラン教育サドベリー教育についてご紹介します。そして、次回その3で残りのフレネ教育イエナプラン教育を紹介していきますので、ぜひ最後までご覧ください。

以下は、この本を読んで個人的に要約したものです。

世界7大教育法に学ぶ才能あふれる子の育て方 最高の教科書

3.レッジョ・エミリア教育

レッジョ・エミリア教育の概要

創始者・おいたち ローリス・マラグッツィ 1920〜1994
元小学校教師、教育思想家・理論家
イタリアファシズムやドイツナチスに最後まで抵抗した。イタリア北部の小さな街「レッジョ・エミリア」で、第二次世界大戦直後、市民が自ら幼児学校を設立したのを手伝い発展させた。
理念・スローガン 子どもは100の言葉を持っている。
特徴・キーワード 未就学児に特化した教育。ピアッツァ(広場)やアトリエ、キッチンなどを備えた心地よい空間で自由に「プロジェッタツィオーネ(探究活動)」をさせる。「報告会議」で「ペタゴジスタ(教育の専門家)」と「アトリエリスタ(芸術の専門家)」や保護者の意見を取り入れて、「プロジェッタツィオーネ」を発展させる。

レッジョ・エミリア教育は、子どもたちの独創的な芸術作品が有名になったことから「芸術による英才教育」とよく勘違いされるのですが、その解釈は一面的に過ぎません。
大人の考えや価値観を決して押しつけずに子どもたちの探究心を尊重し、自由な挑戦や知的好奇心の萌芽を引き出すことが一番大切とされています。そのため、教育現場には規程のカリキュラムや時間割はありません。その代わりにあるのが「プロジェッタツィオーネ」という概念です。

プロジェッタツィオーネとドキュメンテーション

プロジェッタツィオーネ」とは子どもの興味・関心から始まる探究活動を指し、子どもたちが時折みせる興味・関心の萌芽を見逃さないよう、しっかりキャッチして引き出してあげるのが教師の役目です。
ドキュメンテーション」とは教育の日常における様々なことを文字や写真や映像で記録していくこと。「プロジェッタツィオーネ」で行った様子を「ドキュメンテーション」していくのが、レッジョ・エミリア教育の本質なのです。
そのため、教師は子どもの瞬間的な興味・関心に気付き、共有し、最大限に活用するため検証する必要があります。その共有は「報告会議」と呼ばれ、以下の専門的な教育者によって構成されます。

ペタゴジスタとアトリエリスタ

ペタゴジスタ」とは、大学で教育学を専攻した教育の専門家のこと。「アトリエリスタ」とは、大学で芸術学部を卒業した芸術の専門家のこと。両者と教師が揃って「報告会議」をすることで、より高度に子どもたちの探究心を深め、自発的な活動を引き出すことができます。

創始者マラグッツィが作った「100の言葉」(p.154)という詩こそ、この教育の真髄が表現されています。ぜひ本書でご覧になってみてください!

4.ドルトン・プラン教育

創始者・おいたち ヘレン・パーカースト 1887〜1973
小学校・高校・師範学校で教師経験を積み、モンテッソーリに師事したことから、学校授業の効率化案を発想。それをマサチューセッツ州の小都市「ドルトン」の中等教育学校で実行したことから「ドルトン実験校プラン」と呼ばれるようになった。1919年にニューヨークに創設された「ドルトン・スクール」は全米屈指の進学校として知られている。
理念・スローガン 学校の真の使命は、生徒を型にはめることではなく、自分の考えをもてるよう自由な環境を整えて、学習するうえで生じる問題に立ち向かう力をつけることである。
特徴・キーワード 自由」と「協同」が2大原理。「ハウス(ホームルーム)」「アサインメント(契約)」「ラボラトリー(教室)」が3つの教育実践の柱。規程の時間割はなく、生徒が自由に計画を立て、計画通りにラボラトリーに出入りして、アサインメントを終わらせる。協同で課題に取り組むことも推奨される。

ドルトン・プラン教育では、時間割はなく自分の好きな時間に、学びたい教科の専門教員がいる教室(ラボラトリー)へ出入りします。しかし、今までの画一的教育と一線を画しているかというとそうではなく、伝統的教育と新教育を融合した「いいとこ取り」の教育法なのです。
日本でも1922年にドルトンプラン教育が紹介され一時的に「成城小学校」(現在の成城学園初等学校)や予備校の「河合塾」などがこの教育法を取り入れています。

自由と協同

まず学習課題のゴールを教員が設定し、その目標到達までの進度や方法は子ども自ら考えさせ実行させる。そこで効率よく達成させるために「自由」と「協同」を利用するのです。与えられた課題を自由に遂行できるよう、時には生徒同士協同することが求められます。

ハウス・アサインメント・ラボラトリー

  • ハウス」とは、一般的なホームルームにあたるものです。担任は「ハウスアドバイザー」と呼ばれます。幼児期は主にハウスでの遊びをメインとし、子どもたちの学びへの興味を抱かせるように関わっています。
  • アサインメント」とは、生徒と教員の契約です。それぞれの年齢にあった課題が与えられ、生徒たちは期日までにやり遂げる約束をし責任を負います。生徒本人でいつ何の課題をするのか判断が委ねられるため、計画性や実行力が養われます。
  • ラボラトリー」とは、専門教科を学ぶ教室のことです。低学年ではハウスアドバイザーが学習の大半を担当しますが、学年が上がるに従って、専門の教員から教科指導を受ける機会が増えます。

子どもたちはハウスでの遊びが主な活動となり、ハウスの中で遊びながら学び、ハウスアドバイザーによって自然と学びへの興味が湧くようになります。

また、著者も書き記していますが、アサインメントにより子どもが各々の課題をこなし、計画的に実行する力が養われるため、他の教育法と比べて進学や受験を目的にするのに効率的な教育と評されます。実際、進学校に比較的多く採用される教育法で、進歩的教育の先進国であるオランダでは、中等教育段階(日本における中学校・高等学校の段階)でドルトンプラン教育を採用している学校が多いそうです。

5.サドベリー教育

創始者・おいたち ダニエル・グリーンバーグ 1934〜
ニューヨークのコロンビア大学で理論的物理学の博士号を取得。同大学で物理学や科学史を教えていたが、理想の教育を実現するため、1968年にマサチューセッツ州のフラミンガムに「サドベリー・バレー・スクール」を開く。4〜19歳の子どもたちが通っている。
理念・スローガン 「この学校の目的は、学習が自己の動機、自己管理、自己判断によって最善のかたちでもたらされるとの原則に基づき、コミュニティとしての教育環境を創設、維持するものである」(サドベリー・バレーの規則より)
特徴・キーワード 子どもたちに一切の強制をしない。一日中遊んでいてもいい。子どもたちが教えて欲しいと思ったときに「協定(ディール)」を結ぶことでクラスが成立し授業が行われる。学校のルールの制定やスタッフの採用・解雇までも全ての決定に子どもたちが関わる。最高決定機関である「全校集会(スクールミーティング)」で子どももスタッフも同等に1人1票の権利をもつことから「デモクラティック・スクール(民主主義の学校)」とも呼ばれる。

サドベリー教育の特徴としてまず、子どもに対する一切の強制がないことがあげられます。カリキュラムや時間割がない。学年もクラスもない。宿題も成績もない。「卒業」のタイミングも子ども自身が決めます。
子どもたちは自分の好きなこと・生まれつきの傾向に従って毎日を過ごすことで、最適な形で学んでいくことができるという信念のもとに教育が実践されているのです。

自由と民主主義

一日中遊んでいてもいいからといって全く学習をしないで卒業した生徒はいません。子どもたちがどんなことでも学びたいと思ったとき、専門の教えてくれる大人を見つけて教えを請います。それが「協定」となりそこではじめてクラスが生まれます。
算数でも音楽でも、はたまた写真でもドラムでも良いのです。日常を強制されることなく、自分の意志で過ごすことから、この教育がいかに「自由」に重きをおいているかが伺えます。

サドベリー・バレー・スクールでは、学校内のルールなど全ての決定に子どもが関わります。そこで週に1回開催される「全校集会」で様々な決定を話し合うのです。これは「立法」の機能を担います。
さらに学校運営は「係」や「委員会」によって構成され、これが「行政」の機能を担います。
紛争解決には「全校集会」の下に「司法委員会」が組織され、調査や裁判が行われることもあります。これが「司法」の機能を担います。お分かりのとおり、サドベリー・バレー・スクールは「小さな民主主義社会」なのです。

サドベリー教育では、卒業時読み書きができない生徒はいないとはいえ、学びを強制しないため全く勉強をしないという選択肢もありなのです。そして面白いのが、自由を強制することもないのです。子どもが望むことをする、その手伝いをするのが大人という考えなため、サドベリー・バレー・スクールの卒業後進学率が高いとはいえ、徹底的に自由を尊重された教育といっても過言ではないのかもしれません。

まとめ

以上が、「世界7大教育法に学ぶ才能あふれる子の育て方 最高の教科書」からレッジョ・エミリア教育、ドルトン・プラン教育、サドベリー教育についてまとめてみたものです。

上記3大教育法は、子どもの自発性と探究心が求められ、子どもの自由をサポートするのが大人、という考えが同じなのではないかと思いました。既存の画一的な教育法である、教師が生徒に指導する場面は少しも出てこず、むしろ生徒が教師と同等に意見を述べ、学校を運営していく主体的な立場にあるような、一見逆転しているようにも見えるのが特徴的だと感じました。

各々の教育法で独自の呼び方や考え方があるため網羅的にまとめることは難しいのですが、基本的な名称や教育理念をまとめましたので理解していただけたら嬉しいです。

この本は子育てに関わる親のみならず、教育関係者や教員にも参考になる内容だと思います。もっと詳しく知りたい方はぜひ手にとって読んでみてください!何かヒントになることが書かれていると思います。

今回ご紹介した教育法は科学的根拠に基づいたものではありませんが、一つの考え方として子育ての参考になればと思います。忙しい育児の中で読む時間が取れなかったり、じっくり本の世界に浸れなかったりしますよね?そんな時にこのまとめがお役に立ったら嬉しいです。

今後、NOCCでは他の書籍もご紹介していくので、引き続きご参考いただければと思います。
まとめや要約を知りたい書籍がございましたら、ぜひお気軽にコメントください。

書籍情報

書籍名 世界7大教育法に学ぶ才能あふれる子の育て方 最高の教科書
著者 おおた としまさ

1973年、東京都生まれ。教育ジャーナリスト。麻布中学・高校出身で、東京外国語大学中退、上智大学英語学科卒。中高の教員免許を持ち、リクルートから独立後、独自の取材による教育関連の記事を幅広いメディアに寄稿、講演活動も行う。著書に『中学受験「必笑法」』 (中公新書ラクレ)、『受験と進学の新常識』(新潮新書)、『名門校とは何か?』(朝日新書)など50冊以上 。

発行所 大和書房
発行日 2019/06/10