世界7大教育法に学ぶ才能あふれる子の育て方とは?(その3:フレネ教育、イエナプラン教育)

みなさんこんにちは。
前回、世界2大教育法のモンテッソーリ教育シュタイナー教育、そしてレッジョ・エミリア教育ドルトンプラン教育サドベリー教育についてご紹介しました。

今回その3ではフレネ教育イエナプラン教育を紹介していきます。
世界の様々な教育法を紹介してきましたが、本記事末尾に私が考える各教育法から見えた将来求められる人材についてまとめていますので、ぜひ最後までご覧ください。

以下は、この本を読んで個人的に要約したものです。

世界7大教育法に学ぶ才能あふれる子の育て方 最高の教科書

.フレネ教育

創始者・おいたち セレスタン・フレネ 1896〜1966
第一次世界大戦で負傷兵となった若き小学校教師がフランスの片田舎の小学校で試行錯誤の中で様々な教育技術を編み出した。フランスの公立学校教師の間で支持が広まる一方で、公立学校の枠組みに限界を感じ、1935年、自らの学校をヴァンスに作った。
理念・スローガン 子どもは自分が役立ち、自分に役立ってくれる理性的共同体の内部で自己の人格を最大限に発展させる。
特徴・キーワード 押しつけ型の一斉授業を廃止し、各々の学習計画表に従って個別学習を進めるスタイル。授業を「仕事(トラヴァーユ)」と呼び、教科学習だけでなく「自由作文」や「手仕事」にも取り組む。一方で学校を「理性的共同体」と位置付け、「生徒集会」を設けたり、「イニシアチブ」と呼ばれる奉仕活動を子どもに求めたりする。

フレネは自分の方法をあえて1つの教育体系にはまとめませんでした。「これがベストな教育だ」と掲げることで正解主義に陥り自分の頭で考えなくなるからです。そこで教育体系ではなく「教育技術」を発案しました。

教育技術と仕事

フレネの考えた教育技術として「自由作文」や「手仕事」など様々な工夫があります。フレネは特に国語教育に改革をと、印刷機の導入に積極的でした。印刷機は今でいうところのタブレット端末や電子黒板などのICT(情報通信技術)の発想に相当します。
自由作文」は自由なスタイルで書く作文のことで、早くて3〜5歳から始めます。もちろん最初は文字を書けないので絵を描きます。文字や文法は気にせず自発性を重んじ、発表や批判しあうことにより国語力を高めていきます。
手仕事」は手芸や工作、お絵かき、お菓子作りなど自分のやりたいと思うことを追求します。他にも科学実験や環境学習など教科的なことも含まれます。

一斉授業の代わりに2週間に1度、子どもたちが各々「学習計画表」を作成し、それに従って個別学習を進めます。一般的に授業を指す一連の活動をフレネ学校では仕事と呼びます。お金を稼ぐ意味ではなく研修などのワークに近いニュアンスです。
仕事には文字や計算の習得、自由作文や手仕事も含まれます。フレネは「生活に根ざした仕事と教科学習的な仕事は連続している」と考えていました。

理性的共同体

フレネ教育では個別性を重んじると同時に共同体意識も重んじます。その象徴が「生徒集会」です。学校生活における様々なことを子どもと先生が対等に意見を出し合い、理性的に話し合う場です。
学校を理性的共同体と呼ぶのもそのためです。直接民主主義の機会を設け、共同体としての意識を高めます。この共同体を支える要素して「イニシアチブ」があります。学校のためになることを子ども自ら見つけて実行する奉仕活動のことで、仕事や自己管理もそのひとつです。

フレネは学校を、単に子どもたちの個別の才能を伸ばす場ではなく、健全な民主主義社会を支える成熟した市民を育成する場と捉えていたのです。現在、様々なフレネの教育技術が世界38ヵ国に広がっています。

フレネが「これがベスト」という正解主義を嫌っているため、教育や子育てに正解はないと気を楽にして取り組める点が柔軟性がありとても良いと感じました。一斉授業はなく自発性を重んじるため、自由放任かと思われがちですが、フレネの教育技術は事細かくスケジューリングされ、子どもたちは自分が今何をすれば良いのか迷う必要はありません。

そのため、完全個別制度を取り入れ、小さな民主主義的社会を形成しているという点は共通ですが、世界中の学校でそれぞれ少しずつ違った指導を行っていて各国の特徴が出やすい教育法のようです。

.イエナプラン教育

創始者・おいたち ペーター・ペーターゼン 1884〜1952
ドイツの中高一貫校にあたるギムナジウムの教員だったが、そこでの教育改革が評価され、1923年にイエナ大学の教育学部教授に就任。大学付属の実験校で独自の研究をもとに、校長のハンス・ウォルフとともに後に「イエナプラン」と呼ばれるようになる教育実践を始める。1960年代に、オランダの新教育推進組織の書記をしていたスース・フロイデンタールによってオランダに紹介され発展した。
理念・スローガン 子どもの主体性の尊重、異なる他者の受容、学校共同体。
特徴・キーワード 子どもと社会と学校についての「理想」を掲げた20の原則をコンセプトとして共有し、それを具体的にどう展開するかは、現場の子どもたちの状況に合わせ、個々の教員の自由裁量の任せる(オープンモデル)。3学年からなる異年齢学級(ファミリーグループ)と4つの基本活動(対話・遊び・仕事・催し)のリズミックな循環による時間割が特徴。教科の枠を超えて、本物の事物のシステムを共同で探求する「ワールドオリエンテーション」は、イエナプランのハートと呼ばれる。

イエナプラン教育はドイツで生まれ、オランダで発展した教育法です。1917年にすでに「教育の自由」が確立されていたオランダでは、学校と教師の自由裁量権と自立性が広く認められていました。
1962年にオランダで初となるイエナプラン校が誕生します。イエナプラン教育とは、教育手法ではなく、教育理念でありコンセプトでありビジョンなのです。その理念を現場の状況に合わせながら教員が創意工夫をすることを強く勧めるオープンモデルを採用しています。

ワールドオリエンテーション

イエナプラン教育ではマルチエイジが前提で、4〜6歳、6〜9歳、9〜12歳の異学年が同じ「リビングルーム(教室)」で学びます。同じリビングルームで学ぶ生徒たちを「ファミリーグループ」と呼びます。4〜5人のこれまた異学年の子どもが同じテーブルを囲み年長者が年少者の面倒をみたり教えたりします。

そのため一斉授業はなく、個人学習する時間を「ブロックアワー」と呼び、毎週「グループリーダー(教員)」と相談しながら各自が作成する「タスク計画表」に従って進みます。専門教科学習や知識の暗記以外の、子ども同士の対話や探求活動が必要な発展的な学習に関しては「ワールドオリエンテーション」という枠組みのなかで進めます。

これはイエナプラン学校活動の中心を成すため、7つの経験領域に分類されたカリキュラムがあります。その他、「サークル対話」を大切にしています。輪になって話し合いをします。朗読や発表の場にも活用され様々な時間に民主的対話を求められます。

4つの基本活動

時間割がないため、午前に知性や身体を高める活動を、午後は芸術演劇をといった子どもたちのバイオリズム(心身の状態を表す「身体、感情、知性」の3種類の波)に合わせて、以下4つを組み合わせて時間割を作成します。

  1. 対話:サークル対話や普段の会話などコミュニケーション全般を指す。
  2. 遊び:文字通り遊ぶこと。幼児のグループは1日の大半が遊びの活動をする。
  3. 仕事:主にブロックアワーやワールドオリエンテーションのことを指す。
  4. 催し:年間行事やお誕生日会、ミニ学芸会など毎週のように催しがある。

自立学習の時間が多いにも関わらず、催しが毎週のようにあったりと、これらの教育活動を組み合わせて共同体としての意識一体感を学ぶことができます。

イエナプラン教育とは、「多様な人々がお互いを尊重し合いながら暮らせる民主的社会を維持発展させるための理想教育と言って良いのではないでしょうか」と著者は書き記しています。イエナプラン教育には独自の教材や教授法はなく、教育理念のみ存在するため、各学校で各教師に創意工夫が求められる難しさがありますが、子ども一人一人に沿った教育・時間割を組み立てる為、オランダでは根強い人気があります。

まとめ

以上が、「世界7大教育法に学ぶ才能あふれる子の育て方 最高の教科書」から、フレネ教育、イエナプラン教育についてまとめてみたものです。

上記2大教育法は特に、子どもの自由と共同意識が強く保証され、子どもの未来を守るために発展し世界に広まった教育法だと感じました。

以上、7大教育法をその1〜3に渡って見てきました。各々の教育法で独自の呼び方や考え方があるため、網羅的にまとめることは難しいのですが、民主主義的調和を重んじる教育法が多いと感じました。

私はある本を読んでこれは的を得ていると納得したことがあります。それは、『日本を含めアジア、アメリカやイギリスなどは子どもが「将来いかに社会的に成功するか」に重きを置いているのに対して、ヨーロッパでは「将来いかに幸せになるか」ということを重要視している』ということです。つまり、「学力に重きをおき、良い大学・良い会社へと導く学歴主義」か、はたまた「子どもの性格や強みに重きをおき、才能を開花させようと導く能力主義」か。経済的な背景や文化的な背景はもちろん各国で違いますが、親が子どもや教育に求める視点が違うと、社会を構成する学校や会社も変わってくるのではないかと思います。

もちろん、人により幸せや成功の定義や価値観は違いますから、成功すれば幸せとも限らないし、幸せならば成功するとも限りません。でも、自分の好きなことを磨き、自分の才能を信じて幸せを見つける人生はきっと楽しいし、これからの会に必要な「何かを生み出す力」が湧いてくると私は思います。

この本を読み各教育法をまとめて感じたのは、全ての教育法において、子どもに自由と共同意識を持たせ、自立と創生を促している点は、共通しているのではないかと思いました。つまり、一人一人にあったレベルで学習していきながら集団行動を学び、自分で考え全く新しいものを作り出すことが評価される教育法が、それぞれ名前や派生を変えて存在していると思いました。

しかし、こんなに多くに教育法が世界で普及したことを鑑みると、やはりそれぞれ教育に関して創始者の願いが異なるため、本質的な教育に対する考え方が違っているなと感じます。カリキュラムがある教育法もあればないのもあるし、異学年混ざっているのもあれば同じ学年でまとまっている教育法もありますよね。それぞれの教育において何を重視しているかによって、各教育法の特徴が見えてくると思います。

この本は子育てに関わる親のみならず、教育関係者や教員にも参考になる内容だと思います。もっと詳しく知りたい方はぜひ手にとって読んでみてください!何かヒントになることが書かれていると思います。

今回ご紹介した教育法は科学的根拠に基づいたものではありませんが、一つの考え方として子育ての参考になればと思います。忙しい育児の中で読む時間が取れなかったり、じっくり本の世界に浸れなかったりしますよね?そんな時にこのまとめがお役に立ったら嬉しいです。

今後、NOCCでは他の書籍もご紹介していくので、引き続きご参考いただければと思います。
まとめや要約を知りたい書籍がございましたら、ぜひお気軽にコメントください。

書籍情報

書籍名 世界7大教育法に学ぶ才能あふれる子の育て方 最高の教科書
著者 おおた としまさ

1973年、東京都生まれ。教育ジャーナリスト。麻布中学・高校出身で、東京外国語大学中退、上智大学英語学科卒。中高の教員免許を持ち、リクルートから独立後、独自の取材による教育関連の記事を幅広いメディアに寄稿、講演活動も行う。著書に『中学受験「必笑法」』 (中公新書ラクレ)、『受験と進学の新常識』(新潮新書)、『名門校とは何か?』(朝日新書)など50冊以上 。

発行所 大和書房
発行日 2019/06/10

 

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