親子関係を良くするには、「恥」の感情を持ってはいけない!?

今回ご紹介したい論文の著者たち(Ruckstaetterら, 2017)は、親子関係がうまくいっていない時に、関係の改善へと向かわせる親の行動や感情を調べました。特に、親子関係の修復や維持のために欠かせない謝罪、共感、恥、罪悪感と愛着に対する複雑な関係を研究した文献です

*専門的な内容になりますので、とりあえず結果が知りたい!という方は「まとめ」から読んでいただいても大丈夫です!!

親の謝罪、共感、恥、罪悪感、愛着: パス解析

はじめに

普段は親子関係が良好でも、常に良好というわけではありません。ときには親は、子どもとの争いを悪化させたり、関係を悪くさせたりします。(Siegel & Hartzell, 2003)。壊れた親子関係を修復するため、Gottman(1997)は謝罪をすることを提唱しました。謝罪は関係を修復するのに役立つ(Exline, Deshea, & Holeman, 2007; McCullough, Worthington, & Rachal, 1997; Zuccarini, Johnson, Dalgleish, & Makinen, 2013)上に、親子間の共感と親密さを促進します(Mc-Cullough et al., 1977)。

目的

謝罪が親と子の間の関係の破綻を回復するのに役立つという仮定で、著者たちは謝罪、共感、恥、罪悪感、愛着に対する親の態度について調査しまた。

方法

参加者

3〜18歳までの子どもの親327人(男性82人、女性245人)
(肉親、継親、養親、またはそれらのカテゴリーの組み合わせ)

調査内容

調査は同意説明書、人口統計アンケート、および下記に記載されている測度質問紙で構成。

子どもへの謝罪:謝罪傾向の尺度(PAM;Howel,Dopko,Turowsk,and Buro,2011)

子どもへの愛着:親密な関係における経験ー関係構造の調査票(ECR-RS;Fraley,Heffernan,Vucary,&Brumbaugh,2011)

子どもへの共感:対人反応性指数(IRI;M.Davis,1983)

親の恥、罪悪感:罪悪感と恥を感じる傾向の尺度(GASP;Cohen et al.,2011)
「自分が間違っていることを子どもに認めたくない。」、「謝罪しないことで、私が望むように振る舞い続けることができる」など。(1.強い不一致〜7.強い一致で採点。)

結果

パス分析によって仮定されたモデルは適合が確認されました(RMSEA = .08; CFI = .93; IFI = .93; χ2 = 32.85, p < .001; N = 327)。最終モデルは仮定されたモデルでの恥と罪悪感の間にパスを加え、共感と恥の間のパスを消すことによって作成されました。最終モデルについてもモデルは適合が確認されました(RMSEA= .07; CFI= .93; IFI= .94; χ2= 30.71、p <.001; N = 327)。これらは、関係の修復に有益な謝罪についての過去の研究を支持するものでした。しかし親の恥は、子どもへの謝罪と負の関係にありました。

まとめ

今回の論文では、①子どもに対して共感を示すこと、②子どもに対して罪悪感を持つこと、③子どもに対して謝罪すること、の3つは、親の子どもに対する愛着につながることがわかりました。一方で、子どもに対する恥の感情は、子どもに謝罪するという行動を妨げてしまうこともわかりました。

物事に対して強い恥を感じることは、自己を正当化することにつながります。そしてそうなると謝るということが難しくなります。その結果子どもへの、より安全な愛着の段階へ進みにくくなるのではないでしょうか。

それぞれのご家庭における親子の関係はさまざまで、理想とするところも異なると思いますが、親も子どももその関係に満足できるような努力は必要なのではないかと思います。そのためには、まずは相手の人格を受け止め、認めることから始める必要があります。そして、自分の言動が間違っているかどうかを考えて認める力を持っていることで、自分の罪悪感を受け入れたり、後悔していることを表現したりできるようになり、素直に謝ることができるのだと思います。たしかに、自分が間違っているということを認め、表現するのは難しいことだと思います。ですが、たとえ時間が長くかかっても、そうすることが親子関係の改善や修復につなげる方法の一つになるでしょう。

(参考文献
Ruckstaetter, J., Sells, J., Newmeyer, M. D., & Zink, D. (2017). Parental apologies, empathy, shame, guilt, and attachment: A path analysis. Journal of Counseling &    Development, 95(4), 389-400.

その他の参考文献

Davis, M. H. (1983). Measuring individual differences in empathy: Evidence for a multidimensional approach. Journal of personality and social psychology44(1), 113.
Exline, J., Deshea, L., & Holeman, V. T. (2007). Is apology worth the risk? Predictors, outcomes, and ways to avoid regret. Journal of Social and Clinical Psychology,   26(4), 479–504. doi:10.1521/jscp.2007.26.4.479
Fisher, M., & Exline, J. (2006). Self-forgiveness versus excusing: The roles of remorse, effort, and acceptance of responsibility. Self and Identity, 5(2), 127–146. doi:10.1080/15298860600586123
Fraley, R., Waller, N. G., & Brennan, K. A. (2000). An item response theory analysis of self-report measures of adult attachment. Journal of Personality and Social Psychology, 78(2), 350–365. doi:10.1037//0022-3514.78.2.350
Gottman, J. (1997). Raising an emotionally intelligent childThe heart of parenting. New York, NY: Simon & Schuster.
Howell, A., Turowski, J., & Buro, K. (2012). Guilt, empathy, and apology. Personality and Individual Differences, 53(7), 917–922. doi:10.1016/j.paid.2012.06.021Siegel, D. J., & Hartzell, M. (2003). Parenting from the inside out: How a deeper self-understanding can help you raise children who thrive. New York, NY: Tarcher.
Zuccarini, D., Johnson, S., Dalgleish, T., & Makinen, J. (2013). Forgiveness and reconciliation in emotionally focused therapy for couples: The client change process and therapist interventions. Journal of Marital and Family Therapy, 39(2), 148–162. doi:10.1111/j.1752-0606.2012.00287.x

ABOUTこの記事をかいた人

Cheah

母国はマレーシアで、日本に留学し薬学部を卒業した後、薬剤師として15年働いていました。アメリカに12年間住んだことがあり、日本には13年住んでいます。 子どもが3人と孫が1人います。今までの子育て経験を生かした記事を書きたいです。

1 個のコメント

  • こちらの記事にコメントくださった方(ちーまま様)へ
    コメントをいただきありがとうございます。
    ライターCheahの翻訳を参考に記事を執筆したライターYoshinoです。
    コメントに対して個別でお返事しようとしたのですが、メールアドレスが間違っていたようで遅れませんでした。
    お手数ですが、もう一度正しいアドレスでコメントをいただけないでしょうかm(_ _)m

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