こんにちは!
突然ですが、普段お子さんが勉強や宿題をしているとき、どんな様子でやっていますか?
とにかく早く終わらせて遊びたいと思っている子、問題をおもしろいと思って解いている子、面倒くさくて適当になりすぎる子もいると思います。
問題に取り組むときの気持ちは本当に人それぞれですよね!
今回ご紹介する論文では、感情が問題解決に与える影響について検証しています。
では、ご紹介します♪
専門的な内容になりますので、とりあえず結果が知りたい!という方は
「まとめ」まで読み飛ばしていただいても大丈夫です!
ポジティブ・ネガティブな感情が、異なる方法で洞察問題の解決を促進する〜暗示的にヒントを与えた上での研究〜
本記事では、実験2の内容を主に伝えます!
(実験1、2で似た結果が出ていますが、実験1では正解率が非常に低く、実験2のほうがより信頼できるデータがあるため。)
目的
暗示的にヒントを与えられて洞察問題解決(誤ったアイデアを思いつきやすく手詰まりに
問題についての理解が変化し,突然閃くように解が発見されること)する際に、ポジティブな感情やネガティブな感情が解答にもたらす影響を調べる。
実験2では、実験1よりも正解率を上げるために出題形式を簡単にした。(図の使用など)
調査方法
調査対象
立命館大学 学部生 129人(女性68人、男性61人、18~29歳まで、平均年齢20.8歳、標準偏差(SD)=1.3年)
調査内容
実験と参加者のデザイン
・129人の参加者を下記の参加者デザインの6条件群のうちの1つに無作為に割り当て、*放射線問題を解かせて感情状態が結果にどう影響するかを調べた。
ポジティブ感情 | ネガティブ感情 | ニュートラル感情 | |
ヒントあり | ヒントあり&ポジティブ感情群 | ヒントあり&ネガティブ感情群 | ヒントあり&ニュートラル感情群 |
ヒントなし | ヒントなし&ポジティブ感情群 | ヒントなし&ネガティブ感情群 | ヒントなし&ニュートラル感情群 |
*放射線問題 (Duncker,1945)
解答者は、ガン患者を治療する医者として、健康な組織を傷つけずに悪性腫瘍を破壊する方法を解答する。
このガンは手術できないが、悪性腫瘍を放射線で破壊できる。治療の効果をあげるためには高強度で患部に当てなければならないが、そうすると健康な組織も壊れてしまう。一方、低強度で当てた場合は悪性腫瘍も健康な組織も傷つかない。
→解決策:複数の低強度の放射線を異なる方向からいっせいに腫瘍にあてること。
集中分散解決と呼ばれる。
手順
課題1
参加者の感情状態操作(10分間)
ポジティブ感情群:人生で経験した2つの嬉しい出来事を思い出させ、詳細を書かせた。
ネガティブ感情群:人生で経験した2つの悲しい出来事を思い出させ、詳細を書かせた。
ニュートラル感情群:魚や花など、あるカテゴリーに関連するものを思いつく限り書かせた。
課題2
放射線問題の自由記述解答
①放射線問題を文章と画像で問題・解答用紙上に示し、最初の自由記述解答をさせた。(2分間)
②「休憩」として、複数の画像の中にヒント画像を混ぜた映像を、ヒントであるとは言わずに見せた。(0.033秒×60回)
ヒントありの参加者には、丸い図形に対し、異なる方向から数本の矢印が向いている画像を見せた。ヒントなしの参加者には、何も描かれていない空白の画像を見せた。
③自由記述解答の続きをさせた。(7分間)
④参加者の解答終了後、実験開始から終了までの経過時間を実験者が記録した。
感情誘導のチェック
実験後の参加者の感情状態が実験前後で変化していないか、*MMSでチェックした。
*MMS(Terasaki, Kishimoto, & Koga, 1992):多面的感情状態尺度。落胆、好意、驚きなどの感情状態を多面的に測れる。
結果
・正解率は52.1%になった。(実験1は3.8%)
・下図でオレンジの部分は黒の部分よりも正解率が高かった。
ポジティブ感情 | ネガティブ感情 | ニュートラル感情 | |
ヒントあり | ヒントあり&ポジティブ感情群 | ヒントあり&ネガティブ感情群 | ヒントあり&ニュートラル感情群 |
ヒントなし | ヒントなし&ポジティブ感情群 | ヒントなし&ネガティブ感情群 | ヒントなし&ニュートラル感情群 |
考察
洞察問題解決において、ポジティブな感情もネガティブな感情も、それぞれ異なる方法で参加者の正解率を高めた。
具体的には、
ポジティブな感情:柔軟な思考に関連しており、参加者が周囲の手がかりから連想して問題を解決した。
ネガティブな感情:入念な思考に関連しており、参加者がヒントなしでも根気よく徹底して課題を解決した。
まとめ
ポジティブな感情のときはヒントがあった方が柔軟に問題を解決できて、ネガティブな感情のときはヒントの有無によらず慎重に問題を解決できるみたいです!
また、ポジティブもしくはネガティブな感情のときは、どちらもニュートラルな感情のときより正解率が高いということがわかりました!
そこで、普段のお子さんが勉強するときの様子に合わせて、以下のような方法で応援してみてあげるのも良いと思います。
①前向きに問題に取り組んでいるが、解き方が分からなくて手を止めている場合
最近楽しかったことを聞き、思い出させる。また、「この前こんな問題解いてたよね?」と声がけしたり、「この問題と似てない?」と言って類似問題が載っているテキストを開いて横に置いてあげる。→そうすることで、お子さんがポジティブな気持ちになり、類似問題と課題の解き方の関連性を自分の頭で考えられるかもしれません。
②注意力がなくなってミスが多くなり、解き方が適当になっている場合
子どもに失敗したことや悲しかったことを思い出させるのはかわいそうだし、傷つけてしまうかもしれないので、あまりしたくないですよね•••この場合、ミスをするとどうなるか(先生に怒られるかもしれない、宿題が再提出になるかもしれない)など、未来に起こりうるネガティブなことを想像させるのがいいと思います!→そうすることで、ヒントを与えなくてもお子さんが問題で聞かれていることや条件をちゃんと考えて解くようになり、丁寧な取り組みや細かい見直しができるかもしれません。
お子さんとのコミュニケーションも兼ねて、ぜひ実践してみてください^^!
NOCCでは、今後も子育てに役立つような論文をご紹介していきますので、
ぜひ時間があったらホームページを覗きに来てください♪
(参考文献:Orita, R., & Hattori, M. (2019). Positive and Negative Affects Facilitate Insight Problem‐Solving in Different Ways: A Study with Implicit Hints. Japanese Psychological Research, 61(2), 94-106.)
(参考HP 科研費研究プロジェクト「創造的認知の潜在性と
翻訳:松本 執筆:森藤
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