中学入学前につけておきたい力とは?

みなさんはソーシャルスキルという言葉を聞いたことありますか?
論文や辞書によって定義は微妙に変わりますが、大まかにいうと社会の中で他人と関わっていくために必要な力のことです。

今回ご紹介する論文は「ソーシャルスキルの縦断的変化ー中学生を対象として」(心理学研究2018年 第89巻 第1号pp.29-39,西村、福住、藤原、河村)というものです。
この論文でのソーシャルスキルの測定には、早稲田大学教授の河村茂雄先生が開発された尺度が使用されており、「かかわりのスキル」と「配慮のスキル」で構成されています。

これらの力を中学1年生時、中学2年生時、中学3年生時の同時期に測り
全体的な傾向はどうなのか?
個人差はどうなっているのか?
学年ごとにどう変化するのか?
ということについて調査・研究しています。

それでは、詳しく見ていきましょう!

*専門的な内容になりますので、とりあえず結果が知りたい!という方は
まとめ」まで読み飛ばしていただいても大丈夫です!!

ソーシャルスキルの縦断的変化ー中学生を対象として

目的

中学1年生7月の時点でのソーシャルスキルを測定し、その後2年生、3年生の同時期で測定し全体傾向を把握したあと、個人差を研究する。
中学生において使用されているソーシャルスキルの実態、変化を明らかにする

結果

平均的な傾向として配慮のスキルは高まるが、かかわりのスキルは低下
ただし、全体の約80%は両スキルがともに増加
女子よりも男子の方がソーシャルスキルの平均値は低い

男子は配慮のスキルもかかわりのスキルも増加
女子は配慮のスキルは増加したかかわりのスキルは増加しなかった
二者もしくは複数の仲間の間での使用は、互いのスキルを促進させる。
かかわりのスキルの減少を特徴とする生徒が存在していた。
かかわりのスキルの減少を特徴とする生徒は、1年次においてすでに両スキルが不足

でした!

以上が論文(西村ら、2018)の要旨です。
ここからは私が個人的にまとめたものになります。

まとめ

ほとんどの生徒(約80%)は配慮、かかわりのスキルともに増加
しかし、全体の平均的にはかかわりのスキルは減少
ソーシャルスキルは男子よりも女子の方が高いが、女子かかわりのスキルが増加しなかった
ソーシャルスキルの使用は相手のスキル使用を促進させる!
1年次でソーシャルスキルが低いと、かかわりのスキルが減少する!

ということでした♪ 

まず、一つ目と二つ目の結果はびっくりでした!
平均するとかかわりのスキルは低下しているけど約80%は増加しているということは、低下した生徒の低下の程度が激しいということでしょうか。

男女差に関しては、男子の方はソーシャルスキルの底上げが必要なようです。
女子の方はかかわりのスキルが増加しなかったのでかかわりのスキルを使用しやすい環境作りが大切になってきそうです!

また、ソーシャルスキルを使用することで相手のスキルが促進するということは、自分にかかわろうとしてきた友だちには気をつかって接しようとするということですね♪

しかし、1年次にソーシャルスキルが低いとかかわりのスキルが減少するのには注意が必要そうですね。

(西村ら、2018)の中に、1年次でソーシャルスキルの使用が少ないと、その後の対人的交流の機会が減りかかわりのスキルの使用機会も減るのではないかとの推察がありました。

確かに、クラスメイトとの会話がないと、かかわりそのものがなくなるのでスキルの使用機会も減ってしまいそうですね。

1年生の時点でソーシャルスキルが低い生徒は、その後積極的に周りと関わろうとしなくなる可能性があるので1年生でのソーシャルスキルに関する指導が特に大事なのだと思いました。
学校では、しっかりとソーシャルスキルの指導をしてもらいたいですね♪

また、中学校に入る前の段階、つまり5、6年生のうちにある程度ソーシャルスキルが身についている中学生活がスムーズにスタートできるかもしれません。
どういう風にしたらソーシャルスキルが身につくかに関してはまたの機会にご紹介したいと思います♪

以前、子どものキャラに関する論文をご紹介したときにも言及しましたが、子どもたちにとって学校での生活や友だちとの時間は親と過ごすよりも長い可能性があります。
やはりその場は、子どもたちにとって快適であってほしいですね。

なお、この記事は2018年10月5日に公開されたものです。
そろそろ中学受験が終わる時期なので、中学進学に向けて一度お子さんのソーシャルスキルについて考えてみてはいかがでしょうか♪

NOCCでは、今後も子育てに役立つような論文をご紹介していきますので
ぜひ時間があったらホームページを覗きに来てください♪

(参考文献:ソーシャルスキルの縦断的変化―中学生を対象として(心理学研究2018年 第89巻 第1号pp.29-39,西村、福住、藤原、河村))

ABOUTこの記事をかいた人

Yoshino

個別指導塾と集団指導塾で、主に中学受験・高校受験の英語と国語を担当してきました。 世の中の子育てに励む全ての親御さんたちが笑顔になるような記事を書いていきたいです!!